相談援助のスキルを高めるうえで必要な、社会福祉士の現場実習

空を見上げる介護福祉士

障がい福祉・高齢者福祉・児童発達障がい分野や生活困窮者などの相談支援業務を行う、「社会福祉士」ですが、福祉系の大学や社会福祉士の養成校などで行われる実習とは、どのようなものでしょうか。今回は、社会福祉士の現場実習について解説していきましょう。

■社会福祉士の現場実習の目的

現場実習の体験を通して、社会福祉士として必要な専門知識・専門援助技術などの理解を深めて、実際の現場で社会福祉士の仕事をする際に、必要な技術を活用できるように、高齢者や障がい者に対して、「相談援助業務の方法・資質・能力・技術」を身に着ける目的があります。

■実習は何時間必要なの?

社会福祉士国家資格試験受験資格を得るためには、専門学校や大学・短大で必要な実習カリキュラムの内容は2009年度以降、「24日間以上で180時間以上の現場実習」履修が必要となります。

尚、2009年度以前は1施設での実習時間は「120時間以上と15日以上20日間以内」であり、もう1か所での施設実習を60時間かつ8日間以上必要でした。

■社会福祉士の実習先

実習先はほとんどの場合、通っている専門学校や大学などから提示された施設や公共機関の中から、自分で選択するのが一般的です。実習先を選ぶ際には、事前に調べてから決めるとよいでしょう。実習先の施設などを下記にて紹介しましょう。

・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
・介護老人保健施設(老健)
・通所介護(デイサービス)
・地域包括支援センター
・障がい者支援施設
・身体障がい者福祉センター
・児童養護施設
・知的障がい児通園施設
・社会福祉協議会
・社会福祉センター
・福祉事務症
・医療機関(病院)

■実習することでのメリット

高齢者施設や障がい者福祉・児童福祉などの実習を通して、利用者などと直に触れ合うことで、社会福祉に最も必要な「相談援助技術」、コミュニケーション能力が学び身につくことができます。

いろいろな施設での実習体験を通して、卒業後、将来の自分がやりたい分野や就職したい職場を決めることができます。

■実習に来た社会福祉士を指導した経験

私が勤めていた介護施設では、介護養成校の介護実習生をはじめ、大学の教員専攻のインターンシップなどで施設実習に来る学生の他、年に数名の福祉系大学からの社会福祉士課程、専攻の大学生の受け入れも行なっていました。当時、私はその指導担当をしていました。

社会福祉士は相談業務が主な仕事で、その実習期間も8日から10日程度で、介護業務に入ることはありませんでした。最初は一通り、介護業務の内容と1日の流れなどを説明した後、実習の相手として、話好きで穏やかな利用者を担当してもらいました。

本来なら実習生に付いて、いろいろアドバイスなどをするべきでしょうが、介護の現場は忙しいため、担当している利用者の「性格」「趣味」「好きなこと」「好きな話題」などの基本情報を教えて、「何か困ったことや質問があったら気軽に声掛けしてね」と言って、時々、仕事の合間に実習生に気配りしながら業務をしていました。

実習生は、毎日課題を持って利用者と接していて、会話の中から「困ったこと」「これまでの生活歴」などを聞いて、コミュニケーション方法や課題克服のための実践的相談援助の方法を学んでいました。

当日のまとめとして、実習生に今日話した内容や行動・課題の評価を日誌に書いてもらっていました。私は一人一人の日誌(質問・疑問・会話の内容)に目を通して、実習生からの質問に対してのアドバイスやコメントなどを書く役割をしていました。

■実習生から学んだこと

実習生の日誌を見ていてその時感じたのは、毎日利用者と話をしたり触れ合うことで、実習生の第三者からみた視点が、現場で働く介護者が気づかない、いろいろな気づきや視点の違いを読んで、とても新鮮な気持ちになりました。その後、業務改善をする時に、様々なことを気づかせてくれる「きっかけ」になりました。

■まとめ

実習では施設の利用者の話をよく聞くことで、その人の思いや悩みなど引き出すよう、寄り添う気持ちが相談援助の基本となります。また、現場で感じたことや疑問に思ったことは、すぐに担当指導者や近くにいる職員に聞いて、理解・納得するように心がけましょう。

将来、社会福祉士になって実際に仕事に就いた際に、現場実習で経験したことが、相談援助業務をするうえで重要となることでしょう。