高齢社会が恒常化し、すでに国内全体の超高齢社会が目の前まで迫っています。地方では若者が少なく、次世代の担い手がいない「限界集落」も増えてきました。
高齢者が多くなると、相対的に長期療養が必要な要介護者が増加します。反面、医療の進歩が進み、入院で観察しケアを実施する期間を短くして、在宅で介護や看護を行う方向にシフトしてきました。
日本は国民皆保険の制度があるので、入通院を要する場合や、実際に行った医療的処置、経過観察は、加入している保険の適用を受けて診療する人が大多数でしょう。では、褥瘡を治療する上で受けられる保険適用(健康保険組合に請求する)該当行為はどんなものがあるでしょう。
〇デブリードマンを行った場合の保険適用
在宅看護のニーズが広まり、また長期入院が難しい時世を受けて、褥瘡も主に自宅で観察していく流れが強まりました。そこで、保険診療の算定や点数加算にも、褥瘡患者に対する処置項目が増えています。
●深部デブリードマン加算と陰圧閉鎖処置
保険診療としてカウントされるデブリードマンは、熱傷など皮膚の損傷部に感染・壊死細胞がある部分の外科的処置の実施をした場合に診療点数を加算して請求します。
デブリードマンを行う面積によって保険者に請求する点数は異なりますが、2010年に深部デブリードマン加算が加わり、腱または筋肉の露出を伴う損傷については当初1回限り、1000点を所定点数に加算する事となりました。
また、皮膚の創傷部を密閉して形成を計る、局所陰圧閉鎖処置料も新設されました。
●デブリードマン後の創傷ケアに必要な創傷被覆材支給
デブリードマン実施後、または実施するに至らない創傷も、褥瘡の創面を覆って保護する創傷被覆材は多くのシーンで使用します。入院中は必要に応じてこれらの医療用消耗品を用いますが、在宅看護の場合は価格も高く、気軽に購入する事ができませんでした。そこで、2012年には、在宅における創傷被覆材の保険適用も始まり、褥瘡を在宅で治療する人も入院時と同様に扱われる事になりました。2014年には創傷被覆材と薬剤の価格が改定され、保険薬局で創傷被覆材の支給を受けられる様にもなりました。
●水圧式デブリードマン加算追加
深部のデブリードマンに加えて、2014年には、水圧式デブリードマンを実施した際、一連の治療につき1回限り2500点を加算する事になりました。在宅患者訪問褥瘡管理指導料も新設され、入院治療を受けない在宅看護でも、保険を利用して褥瘡管理を受けられる環境が整い始めたといえます。
褥瘡は、完全看護の中であっても発生するリスクがある皮膚疾患です。入院中と同様に、在宅でケアを行う人が、継続して看てもらえる医師や看護師、管理栄養士の力を得ながら保険を利用して治療を行える様になりました。治療のシーンを選ばず、入院時と同様の医療を受けられるための取り組みが、今後更に広がっていく事に期待しましょう。