褥瘡は、体に加わる外力によって、骨と皮膚表層の間で血流障害をおこすことにより現れる、皮下組織の変化を指します。褥瘡は床ずれとも呼ばれ、かつてはその「ずれ力」が問題になって発症すると言われてきましたが、外からの圧迫(体圧)も原因となることが分かってきました。血管の状態、血行不良などと合わせて、局所にとらわれない包括的なケアが必要となる皮膚疾患です。
〇褥瘡ができるまでの流れ
褥瘡がおこるメカニズムを理解しておきましょう。発症する原因や皮膚の状態を注意深く観察し、異変を認めたらケアする環境をその都度見直していくことで、予防は可能です。
寝たきりやマヒによって体の一部に外力が加わると、圧迫した部分は血流障害を起こします。また圧迫によって、皮膚や筋肉の活動性が下がります。すると、組織を生成する栄養素が皮膚に供給されず、ずれによって起きた皮下組織の損傷を修復する事が出来ないまま、状態がどんどん悪化していきます。
体内の栄養が不足していたり、基礎疾患による栄養の偏りや治療の為の投薬が免疫力を下げたりすることも相まって、損傷を起こした皮下組織が腐りはじめます。これが褥瘡の発症と進行の流れです。
〇皮下組織到達のレベルと褥瘡ステージ
褥瘡のレベルは、深さによって4段階に分類します。ステージ1は表皮の発赤、斑赤が現れた状態です。圧迫を取り除いても赤みが消えません。
ステージ2は、上皮層に損傷が起こり、修復しようとして滲出液が出ます。表皮と真皮を含む皮膚の中間層が損傷し、深度が進むと表皮や真皮の一部で感染や壊死が始まります。
ステージ3は、真皮より深い皮下組織全層で損傷が進んだ状態です。膿が溜まれば創面が盛り上がり、皮下組織の感染、壊死が深刻になります。ただし、皮下組織よりも深くにある筋膜に、損傷は到達していません。
ステージ4は褥瘡の中でも最も深刻で、筋肉や骨、周辺の関節組織にも損傷が現れた状態です。壊死組織を伴い、感染リスクが非常に高まります。
〇褥瘡皮下組織の更に奥深く潜む危険
褥瘡の創傷部は(臀部など圧迫面が広くなれば大きな創面ですが)、さほど大きくないと判断されるケースが間々あります。褥瘡の表面に大きな傷はなくても、局所圧迫により、圧迫箇所が起点となって周辺組織にずれ力が及び、ポケットを作ることがあります。ポケット内部の壊死や感染兆候があり、外科的処置を行ったら、非常に大きなポケットが露呈した事象も珍しくないのです。創の下で感染や壊死・感染がある場合、皮下組織の壊死細胞をすべて除去し、壊死の進行を止めるのが最優先です。
皮膚表面から見た容体で判断をせず、組織障害が深部で徐々に広がるイメージを持って、ケアと対策を行いましょう。