褥瘡の経過観察と予防 危険因子となる疾患にも注意を

人それぞれに、病気や外傷を抱えて入院や安静の時を過ごしているでしょう。
毎日、同じ姿勢をとり続けることによって、褥瘡の発生リスクは高まります。
寝具や体位変換、ポジショニングに薬の使用など、褥瘡を予防するためにはさまざまな危険と原因に注意を払わねばなりません。
しかし、褥瘡は、姿勢や環境に注意を向けるだけで防ぐことができるものでもありません。
寝たきり、または安静な環境を強いる患者自身の疾患が、発生に大きく関わります。


〇褥瘡の周りにある皮膚の様子と発生リスク
褥瘡の発生リスクを想定するときには、好発部位と呼ばれる骨の突出部を中心として、その周辺に圧迫環境やずれが生じる可能性を探ることはとても重要です。
創傷が起こった部位の周辺に、瘢痕(はんこん)が見られた場合、以前にも同じ個所に褥瘡を発生した可能性が高いといえるでしょう。
褥瘡が完治した後に、皮膚が引き続き擦れたり圧迫されることで起こる色素沈着によって、周辺の皮膚が黒くなることがあります。
一度完治をした褥瘡が再発しないように、瘢痕のある箇所の圧迫をとりのぞく環境づくりを行ううえで、危険要因となる持病(基礎疾患)との関連を考えましょう。

 
〇褥瘡と発生因子をアセスメントする
褥瘡を繰り返し起こしてしまう部位、また瘢痕を確認する部位を観察すると、「半身のどちらかに傾けた姿勢しか取れない」「座位の時間が長い」というように、日常生活をどのような姿勢で長く過ごしているかを推測することができます。
体の一部~半身、全身にマヒを起こす神経系の疾患や脊髄損傷、また骨盤骨折は、長時間の同姿勢保持で過ごすことになります。
また、血流阻害や浮腫、合併症といった内的要因がもととなる場合と、治療の長期化によっておこる外的要因の両方に注意しなければならないでしょう。

 
〇褥瘡の危険因子となる疾患例
生活習慣病や加齢に伴う疾患の発症が、褥瘡と深くかかわるケースは珍しくありません。
生活習慣病では、糖尿病や脳血管疾患(脳梗塞など)、うっ血性心不全、動脈硬化がその代表例です。
治療によって、全身の安静を余儀なくされる時間が長くなることに加え、血流の悪化、血栓により全身の血行が悪くなり、皮膚組織の損傷スピードを速める危険要因となります。
加齢に伴う疾患には関節リウマチ、パーキンソン病などがありますが、この際の危険因子は皮膚の擦れ・擦れが起こりやすい点でしょう。
また、骨粗しょう症や尿路感染症やアルツハイマーは、身体臓器の不全や骨折によって自発的に動くことができない環境に置かれるリスクが高いことが発生の原因となります。