「褥瘡」という症状は、病名によってひとくくりにすることができますが、その状態は創傷が生まれる環境や処置方法、経過によって全く異なります。
症状を測るうえで大切になるのは、創の深さ、いわゆる「深達度」です。褥瘡は、発症してからの処置が早ければ早いほど、深達度も軽く治癒までの時間を短くすることができます。
〇深達度による褥瘡の分類
褥瘡はその傷の深さに応じて、ステージ1~4までを設定しています。
ここでは、厚生省労働保険福祉局老人保健課監修の「褥瘡の予防・治療ガイドライン」(照林社)の内容に沿って紹介します。
ステージ1は、局所の圧迫と取り除いても消退しない発赤、紅斑 の状態
ステージ2は、真皮にまでとどまる皮膚傷害(水疱やびらん、浅い潰瘍) の状態
ステージ3は、傷害が真皮を越えて、皮下脂肪の層にまで及ぶ褥瘡 のこと
ステージ4は、傷害が筋肉や腱、関節包にまで及ぶ褥瘡 のこと
以上が大きく4分類した場合の褥瘡深達度の目安です。
ステージの数字が大きくなればなるほど、褥瘡と深達度のレベルは深刻になり、ステージ1と2は「浅い褥瘡」、ステージ3と4は「深い褥瘡」という様に分類されます。
〇褥瘡の深達度は「見た目」で測れない
褥瘡は、皮下組織に起こる傷害、損傷です。
外傷性の皮膚損傷と異なり、肌の上から見るだけでは正しく状況を把握することができない場合もあります。
体表に現れた皮膚の損傷が小さく見えていたとしても、実際の深達度は想定したよりも深く、炎症や感染が進んでいるケースは珍しくないのです。
●褥瘡の深達度を正しく把握するポイント
まずは、見た目の印象と状態で褥瘡の深達度を推測します。
予想を立てて経過を観察しますが、この分類はあやふやなもので、実態に即した適切な処置が必要だということを覚えておきましょう。
創の状態を見て、浅い創または深い創の二つに大別してみます。
新しい肉芽細胞が鮮やかな赤色をし、滲出液が過剰に分泌しておらず臭いが少ない創は、浅い創だと判断して良いでしょう。
深い創の場合、創面に黄色や茶色の部分が多く、滲出液が過剰に分泌(または乾燥状態で硬化)していることが多いです。
創面の茶・黒色や濁った赤色部分は、炎症反応が出ていると見ます菌が繁殖して、正常な皮膚、肉芽細胞ができない状態です。
●深達度に応じた適切な処置のポイント
浅い褥瘡は、細胞形成に必要な条件を整え、炎症や感染を防ぐ処置を行うことが重要です。
浸出液コントロールをしながら湿潤環境を維持します。
外用薬を塗布して創傷部分のケアを行い、創周辺の保湿ケア、体位変換(による体圧分散とずれ力)も継続しましょう。
深い創にある炎症や壊死細胞は、周囲の細胞に悪影響を及ぼしますので、デブリードマンや切除を行い、きれいな創を育てる環境づくりをします。
ずれ力によってポケットを形成している場合は、ポケットの切開をして膿や壊死細胞が残らないように処置を行いましょう。