褥瘡は、その状況やレベルを表現するときに「ステージ1~4」の度数を用います。
これは、深達度を表すレベルの具合を段階的に分類したもので、日本褥瘡学会のガイドラインに掲載されています。
褥瘡の進達度分類は、おおよそその創傷部分を外見から判断したものです。しかし、一見してどれくらいの深さに創が至っているか、重症化していないかを判断して処置を行ったり、経過観察を行うのは危険といえます。
〇褥瘡の重症化を「疑う」定義
皮膚にできた褥瘡の創表面を見て、潰瘍形成が確認できない場合、また色味の変化しか見て取れない場合、その褥瘡が浅いか深いかを正確に判断するのは難しいです。
そこで、表面の兆候に限定せず、褥瘡の重症レベルを深刻なものかどうか「疑う」定義が、新しい概念として加わりました。
『圧力および(または)せん断力によって生じる皮下軟部組織の損傷に起因する、”限局性の紫または栗色の皮膚変色、または血疱”を「疑DTI」とする』と、アメリカの褥瘡諮問委員会で2007年にDTI概念のなかに付け加えられたのです。
●褥瘡の概念 DTIってなに?
DTI(Deep Tissue Injury)は、軽度の褥瘡と見えた場合でも、すでに皮下組織よりも深部で損傷が起こっている状態のことを表します。
表面を見ただけで、その褥瘡が軽度だと判断してしまうと、深部の炎症を見逃してしまい、腱や筋肉、骨に達するような重症状態を招く危険性があるのです。
実際にDTIだと診断するには、MRIやエコーといった画像診断を見ながら創傷部の深度を評価することになりますが、その前に、皮膚状態や色、創の固さ、腫れ具合を見て、DTIを疑う目で経過を観察することの重要性を警鐘したのが「疑DTI」です。
○褥瘡の重症化を段階的処置で探る
一見して黒色化・栗色の壊死細胞や皮膚を確認した場合、壊死細胞は新たな皮膚組織の形成や肉芽細胞の再生の妨げになるとして除去する処置が一般的です(血流阻害や基礎疾患の有無によっては、一部壊死細胞の除去が適切ではないケースもあるので注意が必要です)。
デブリードマンまたはドレッシング材と外用薬で壊死細胞を軟化し除去すると、その損傷部の下にポケットを形成している深い褥瘡を発見した、という症例は珍しいことではありません。
画像診断などを行えば早期に発見できる重症創であっても、時間の経過が無ければ表面変化が現れづらく気づかないことが多いといえます。
深部で炎症が起これば、ポケットの中で壊死細胞や膿の増加を繰り返し、褥瘡はどんどん重症化していきます。
深達する前に、また状態が比較的軽度なうちに適切な処置を行うことで、治癒までの時間を短くすることができるので、浅い褥瘡こそ慎重に、そして丁寧こまめに経過を見ることが大切だといえるでしょう。