健康を維持するためには、正しい栄養管理が必須です。病気を患うと、食欲に偏りがでたり、思った様に必要な栄養を取ることが難しい環境になったりする事があります。
褥創を治療する上で必要な栄養素を知っておけば、食事の取り方や量をコントロールしやすくなります。栄養管理とバランス、改善点を考えた食事を摂取できる様に工夫しましょう。
○褥創の発症にかかわる栄養状態
ケガや病気で入院生活を続けている、または老化や基礎疾患で運動量が減る、といった条件が重なると、食事の量そのものが減りやすくなります。十分な栄養を食物から取る場合、褥創を起こしにくい体作りを栄養面から考えていきましょう。
●まずはエネルギーとなる栄養素を摂取
たとえば、安静状態が長い人や運動制限があって十分に体を動かすことができない人でも、身体を維持すためのエネルギーが必要になります。生存している限り、基礎代謝に使われるエネルギーを補充しなければなりません。
体(の細胞)を活動させるために必要な栄養素はブドウ糖です。基礎代謝に使われる糖は、十分補充されていない状態が続くと、摂取したものの他に、体内にある脂肪やたんぱく質などを糖に変えて消費します。
ですから、活動するためのエネルギーとして十分な糖質をとり、なおかつ不足分を補う他の脂質やタンパク質もあわせて取る事が大切です。
●基礎代謝に必要な栄養が不足すると
人間は、じっとしていても基礎代謝を続け、必要なエネルギーを消費します。摂取したエネルギーの約70%は基礎代謝で消費し、そのうち40%は筋肉で消費されると言われています。もし、十分な栄養が体内に備わっておらず、筋肉にあるたんぱく質をブドウ糖に変換し始めたら、これは「低栄養状態」であって正常な身体維持とは言えません。
体内に取り込んだたんぱく質がブドウ糖に変換される状態が続くと、筋肉を作るために必要なたんぱく質を、常に糖へ変換しようとします。(「異化作用」といいます)これは飢餓と同じ状態で、たんぱく質の合成をストップしてしまいます。
○褥創の予防に欠かせない栄養はたんぱく質
体圧とずれ力に対して、ある程度の耐性を持っておけば、褥創の発症を遅らせる事ができます。そのためには、皮下組織をガードする筋肉と脂肪を備えておかねばなりません。
筋肉を作るために必要な栄養はたんぱく質です。仮に筋肉が圧迫によって傷ついても、たんぱく質でもって筋組織を修復し、合成する事ができるのです。
褥創の予防と治療を栄養面から考えたとき、まず必要なのは生命維持(基礎代謝)をするための十分なブドウ糖が必須です。そのうえで、筋肉を作り育てるたんぱく質、そして体の圧迫を和らげる脂肪層が必要になります。
褥瘡対策に関わらず、健康維持のためには全ての栄養素が欠かせませんが、患者の体状態や年齢、環境に応じて栄養バランスを考え、食事に盛り込む様にしましょう。
参考文献:新床ずれケアナビ 日本在宅褥瘡創傷ケア推進協会編集 中央放棄出版株式会社発行 2011年
褥瘡治療・ケアの「こんなときどうする?」館正弘監修 株式会社照林社発行2015年