健常者にとっても、ずっと寝たままの姿勢が続くのは苦痛です。長時間寝たきりのまま過ごすと、時間の経過とともに、背中や腰、首に痛みやしびれを感じ始めます。
このしびれや痛みを感じる状態は、まさに床ずれの起こるきっかけです。痛みを感じない・体を圧迫し続けない環境を整えてあげることが、床ずれの予防として重要なポイントです。
〇仰向け寝で床ずれが起こりやすい部位
安静を保つときは、あおむけ寝(仰臥位)の姿勢が主となりますが、背中全体をベッドに押し付けると、加重がかかりやすいのは、肩甲骨と後頭部、そして仙骨部分です。
骨が突出している箇所は点で圧迫が集中するため、その部分の血流が極端に悪くなります。血流が悪くなった周辺部位にわずかなずれ力が加わると、皮膚の損傷が起こりやすくなりまます。
〇床ずれのケアに必要な要件は
切り傷や擦り傷のような外傷性損傷と違い、圧迫とずれ力による創傷は、皮膚の表面と皮下組織を痛めつけます。
表向きは、圧迫し続けたことによる赤みや発疹に見えるかもしれません。しかし、表面に現れない皮下組織の損傷が進んでいるかもしれない危険が隠れている、というのが床ずれの恐ろしさです。
赤みや水疱、斑点が皮膚に現れたら、その時点で床ずれの発症を疑いましょう。圧迫を除くように体位を変えて、様子をみます。しばらくして赤みが引けば問題はありませんが、赤みが継続するようなら、皮下組織にまで創傷が進行していると判断していいでしょう。
●背中の除圧方法 マットレスの使用
仰臥位で過ごす患者は、体位変換をこまめにしなければ背面に床ずれがおこる危険が高まります。背中が当たるベッドのマットレスを、体圧吸収する「体圧分散」マットレスに交換しましょう。
症状や病状に応じたマットレスを選ぶことが大切です。マットレスの固さや素材にも配慮しつつ、患者が楽に過ごすことができる好みの姿勢に近づけられれば、細かなずれ力を回避し、なおかつ患者は快適に過ごせます。
●背中の床ずれをカバーするクッション材の使用
背面に床ずれができると、半臥位(横向き寝)に近いポジションをとることが多くなります。すると、その創傷をカバーするために他の部位を圧迫し、局所の床ずれが増えてしまう傾向があります。
背中の肩甲骨は特に出っ張りが激しいため、段差を解消しながら傷の周囲をやわらかく保護するクッション材で覆うという方法もあります。その場合、クッション材のわずかな段差によって、他の箇所に圧迫が生じるので、全身の除圧を考えて補助具や保護材を導入しましょう。