床ずれが起こった部分の黒ずみはなぜ起こる?

寝た姿勢が長い、マヒ症状があって同じ姿勢をとり続けている…。このように全身の運動が難しい人に起こりやすいのが床ずれです。
床ずれは、段階を追って症状が悪化していきますが、そのスピードは一律ではありません。床ずれを行さないためには、2時間おきに体位変換をするなど、一般的な褥瘡予防方法が示されています。しかし、年齢や肌の状態、体圧のかかり具合によって発症が早く起こることも珍しくありません。
床ずれの状態をみる一つの目安に「肌の黒ずみ」があります。創傷部分の状態を、早く正しく知って、適切に洗浄・消毒と消炎を行いましょう。


〇床ずれの傷に起こる黒ずみ
人間の皮膚は本来、体に侵入する細菌やウイルスをブロックする役割を担っています。肌の上皮層には、水分と保湿成分を含み、弾力を持たせており、外から刺激を受けても皮膚層で食い止めます。
皮膚に傷がつくと、その部分から出る血液が固まり(凝固血)、黒くなって傷口を覆います。例えば、普段手先を切ったり、すりむいてけがをしたときに、血が固まってその下に皮膚が新らしくでき、傷を塞ぎますね。
ただし、床ずれが真皮細胞よりも深く進行してしまうと、新しい皮膚を作る前にその傷を完全に回復させる段階を踏まねばなりません。傷口を覆うように血の塊(凝血塊)ができ、皮膚に近い周辺の細胞は栄養を取れずに壊死してしまいます。黒ずみの原因は、この凝血塊と壊死細胞です。

 
〇床ずれの回復段階と黒ずみの対処
真皮細胞よりも深く創が進行した場合、その治療は非常に長い時間を要します。
まず、真皮細胞がなくなった創には、凝血塊や壊死組織が細胞の欠損部分を覆う「出欠凝固」が起こります。これが前述した黒ずみです。そして、創の下にある健康な細胞(炎症性細胞)が壊死組織や細菌を攻撃します。
黒ずみとして見えている壊死細胞や皮膚細胞の壊死は、取り除いてあげなければ新しい細胞が育ちません。壊死細胞の下で化膿が進むこともあり、このまま放置すれば、腱や骨、筋肉細胞にも細菌が広がってしまいます。

 
〇創の黒ずみを取ってきれいな赤色に
壊死細胞の黒ずみが残って、その下に不良肉芽があると、炎症反応が増して滲出液が増えます。すると独特の臭いがひどくなります。黒ずんだ汚い創を処置して、新しい肉芽細胞が育つ鮮やかな赤色のきれいな創になると、悪臭も収まり、滲出液の量も変化してきます。
壊死の黒ずみや、化膿した黄色が見えるような汚い床ずれを、きれいな創面にすることを目指して、洗浄と消毒、炎症反応の経過観察を行っていきましょう。