褥瘡の発生率を下げるための取り組みとケアの算定

どんなに注意深く管理観察していても、褥瘡の発生するリスクを0にするのは非常に難しいことです。ケアを行う環境や人員の問題や、患者の身体状況によって発生する可能性が異なるというのが大きな要因で、褥瘡発生リスクを一元化して管理することはとても簡単なことではありません。

しかし、本来の傷病を治療する目的で入院したり、体の不自由を解消するために安静を採ったりしている人が、さらに痛みや処置を必要とする褥瘡を起こすリスクは、可能な限り回避するべきでしょう。
褥瘡が起こるのは施設や介護者の怠慢だ。といわれていた時期もありますが、決して創ではなく、しかし起こりうるリスクには最大限の注意を行わねばならない、という方向を示したとも考えられる「平成26年度 褥瘡関連項目に関する指針」の概要をご紹介します。

 
○褥瘡有病率と発生推定率の算定
褥瘡の発生率を可視化する目的で、入院患者と在宅の場合における褥瘡有病率・発生推定率の算定方法が記されています。

●施設の褥瘡発生率
調査を行った日に褥瘡が発生している患者数を、同日入院患者数で除した数字を%で表します。また、褥瘡保有患者から既に発症していると記録されていた患者数を引いた数を、同日入院患者数で除した割合は、推定発生率としています。

●在宅の褥瘡発生率
訪問看護ステーションを(過去一ヶ月)利用した褥瘡保有在宅療養者数を、訪問看護ステーションの全利用者数で除した割合が褥瘡有病率です。過去一ヶ月に訪問看護ステーションを利用して在宅で褥瘡発症していた療養者数を、同施設利用在宅療養者で除した割合が、在宅褥瘡推定発生率となります。

 
○褥瘡に関する診療報酬新設・改定項目の中身
褥瘡処置を行った場合に、これまでは褥瘡を考慮した診療報酬算定とはなっていなかったケースが多かったのですが、診療施設での処置加算をはじめ、在宅訪問看護に関する報酬算定が新設、改定を実現しています。

●在宅褥瘡対策チーム管理指導料の新設
入院患者は、病気や怪我の治療または処置を行う際に、看護計画に沿って褥瘡の発生リスクも合わせてケアすることができますが、在宅療養者にとっては専門的に経過を見てもらえる手段がなく、褥瘡の発生が深刻な問題となっていました。
同指針のなかで、新たに「在宅褥瘡対策チームによる在宅患者訪問褥瘡管理指導料」が設けられました。これによって、在宅で発生した褥瘡の程度がひどくなったために入院して治療をすることを繰り返す、という事態も解消が期待されます。
診療報酬として算定されれば、単にサービスとして全額自己負担することなく保険適用を受けることができるので、在宅患者も褥瘡の発生に前向きに取り組めるようになりそうです。