褥瘡は、万人に必ず起こるものではありません。入院や寝たきりの状態など、同姿勢をとり続けていても、褥瘡が起こる人と起こらない人がいます。発症する人にはそれなりの原因があり、その原因もいろんな要因が絡み合っています。
まずは、褥瘡が起こる原因について知り、どのように改善していけば発症を防ぐことができるかを考えましょう。
○身体的原因(局所)
一般的によく知られている褥瘡の発生原因は、局所の圧迫とずれ力による皮膚の損傷・創傷でしょう。一定時間圧迫された皮膚組織が壊れて褥瘡が起こります。皮膚が乾燥してずれ力の影響を受けやすい、皮膚に弾力がなく圧迫で組織が壊れやすい…というように、各部の皮膚状態も大きく影響します。
柔らかく水分を含んで弾力のある皮膚の状態を維持することが、褥瘡の予防に効果を発揮するでしょう。そのために、皮膚の乾燥しやすい環境を改善し、保湿をこまめに行うことが大切です。
○身体的原因(全身)
体の大きさや体重、栄養状態やバランスはもちろん個体差があります。そして、褥瘡が発生しやすい人には一定の共通ポイントがあります。
同じ環境に身を置きながら、発生しやすい・しにくいという差は全身的な要因が大きくかかわっているのです。
●痩せている人は褥瘡を起こしやすい
痩せている人は骨が突出しやすく、局所のずれ力を受けやすくなります。
高齢者は「痩せ」の状態が顕著な人が多く、全体の栄養バランスや栄養そのものが不十分で、抵抗力や免疫力が低下しがちです。このような身体状態は、発症スピードが速くなる要因となります。
●動きにかかわる原因
体内栄養バランスが偏っている、安静を強いられる環境で浮腫みが出ている、投薬治療をしながら一部の身体機能を抑えている、基礎疾患があり体を十分に動かすことができない…という状態も、褥瘡の発症原因となります。
○社会的な原因
褥瘡が発生する原因は、発生した患者の身体だけの問題ではありません。患者の経過を観察するために、介助や看護を行う人の力を充分に借りられる環境にあるかという点は非常に重要です。
どのようにしたら褥瘡を回避し、健全な生活を送ることができるかという知識を得るためのツールを確保する。社会や人とのかかわりの中で、適時適切な情報を得て治療や予防に取り組むことができるコミュニティに参加する。というような、マンパワーやソーシャルの力を得る環境が整っていれば、それは褥瘡予防のために大きな効果を発揮するでしょう。
褥瘡にはさまざまな発生原因がありますが、取り組めそうな問題から、地道にひとつひとつを可能な限りクリアにしていくことで結果が表れてくるでしょう。