床ずれの処置と感染兆候の観察 治癒を早めるために

床ずれを起こした部分(創傷部分)は、常に感染症をおこすリスクにさらされていると考えておきましょう。
床ずれを起こすと、皮膚組織が損傷し、炎症や感染を起こす菌や病原体が体に入ってきやすい状態にさらされます。
皮膚は、外的な要因や刺激を体内に侵入させないバリア機能を備えています。
そのバリアがなくなった状態の身体を守り、再び修復するために、感染症のリスクを排除することが大切です。
また、感染症の兆候があったらその変化を見逃さず、可能な限り早く感染治療を開始して、通常の床ずれ処置に戻れるように、注意深い観察を試みましょう。


〇感染を床ずれの湿潤から予測する
感染症を起こした床ずれの患部には、共通した兆候が表れます。
最もわかりやすいのは、滲出液の増加です。
滲出液が過剰に分泌されている床ずれは、周りの皮膚細胞を浸軟させ、周辺組織が浮腫した状態になります。
床ずれの治療には湿潤環境を維持することが大切ですが、浸出液が多すぎると創面を汚染し、感染症をおこしやすくなります。
適切に処置されている床ずれは、適度に湿潤した状態を保ちやすく、細胞の形成も促進します。
反対に、乾燥が続くような状態では、新たな皮膚細胞形成がスムーズに行われず、瘢痕化(皮膚が縮んでくろずんだ状態、ハリがない状態)を起こしやすくなります。
予後の経過にも時間が掛かるため、床ずれ治療と湿潤状態、感染症の予防には密接な関係があるということを覚えておきましょう。

 
〇床ずれに現れる様々な感染症の兆候
床ずれを起こしやすい部分は、特に骨が突出した箇所や、寝たままの姿勢で圧迫が続く箇所です。
臀部や背部は、安静にして過ごさねばならない人にとって、圧迫を免れない箇所といえるでしょう。
自力で歩行をしたり、車いすへの移乗が困難な人は、下の世話を介助人にゆだねるケースも珍しくありません。
複数個所の床ずれを併発し、基礎疾患がある患者は、床ずれと疾患の治療を同時に行うため、薬の相互作用や副作用によって、思うような効果が上がらないということも考えられます。
排泄物の刺激や汚染によって、臀部の周りで感染症が起こっていないか注意しておく必要もあります。
健常な人も、日常生活の中で様々な感染リスクにさらされています。
体のバリア機能が欠損している床ずれ部分は、感染リスクも上がることになります。
そして感染した創部には、滲出液だけではなく、腫れや熱感、膿、悪臭など、いろんな兆候が表れます。
毎日の経過観察を通して、期間ごとに変化の有無を検証し、感染症の発症を早く感知することが大切です。