寝たきりの状態が長くなると、頻繁に体位変換を行っていても身体の栄養状況や湿度と乾燥、血行不良による皮膚や体内機能の低下によって、数か所同時に褥瘡が発症するケースは珍しくありません。
一か所のケアを重点的に行っていると、健常な他の多発箇所の褥瘡を見落としがちになってしまいます。看護や介助の際に体全体を観察し、軽度の褥瘡を見落とさないというのがとても重要です。
ただ、発症した時は何かしらの痛みを訴えてきます。痛みを伴う箇所を特に注意深く観察して、進行する前に完治を目指しましょう。
○外用薬とドレッシング材
褥瘡を発症すると、創傷箇所から滲出液が出ます。この液そのものに傷を治すためのたんぱく質が含まれているので過剰に取りすぎてはかえって傷の治りを送らせてしまいます。
とは言え、過剰に分泌した滲出液をそのままにしておくと、感染症の元にもなり不衛生な環境を作ってしまいかねません。適度な湿潤状態を作り、ケアを行うには外用薬とドレッシング材を用いて、カバードレッシングを行います。
●滲出液が多い時のケア
滲出液が多い状態のままで、それまでの処置を続けていると、新しく生成される肉芽の浮腫を悪化させる原因となります。また周辺皮膚を浸軟させてしまう事にもつながります。
特に、壊死細胞を除去した後やポケットがある場合は、傷口が深いため、傷口が乾燥しないように外用薬を塗布して乾燥を防ぎ、更にポリウレタンフィルムで湿潤を保つようにします。外用薬は創傷部分の表面を覆う程度ではなく、ポケットの深部までいきわたるようにします。
○外用薬カバードレッシングの固定
寝たきりの状態から体位変換を行うと、患者の意思ではなく介助人の力によって体を動かされます。ドレッシング材がはがれる注意が行き届かず、創傷箇所からはがれてしまう可能性がありますので、処置を行う際にしっかりと固定しておくことが大切です。
●関節部分
動かす頻度が他の部位より多いため、伸展・屈曲に依ってテープがはがれる確率が高くなります。関節を軽く曲げた状態でゆとりを持たせ、伸縮性のあるテープで周囲を固定しましょう。
●臀部
寝たきりの状態が長い場合、最も加圧がかかりやすいため創傷が大きくなる傾向があります。また、オムツ交換や体位変換によって臀裂部分が特に擦れ安くなりますので注意が必要です。臀裂部分にテープがかかる時は、排泄物や粘液でテープが浮いてしまわないように工夫をし、また排泄物からの汚染を防ぐために防水テープを使用するのが基本です。
●踵部分
足を動かせる寝たきり患者は、シーツとの擦れによってテープがはがれやすくなります。大判のドレッシング材をそのまま塗付すると、必ずしわになりテープが浮きやすくなるため密着度が低下しやすい箇所です。切り込みを入れて創傷部分全体に密着するようにするか、複数枚テープを使うようにします。
創傷箇所の深さや進行度、また褥瘡を発症した部位によってドレッシング材の貼り方を工夫し、外用薬の効きと滲出液コントロールを効果的に行うようにしましょう。