一度褥創を発症すると、それを自然治癒で完治させようとするのは非常に難しいといえます。
ごく初期の段階であれば、患部の圧迫を取り除き、皮膚の状態を観察することが基本ですが、見た目にその深部到達度を図りづらいのも、褥創治療の難しさです。
床ずれを治療するには、皮膚の潤いを保持することが何より大切です。
そこで、外用薬を使用した治療と、適切な水分量について説明します。
〇褥創部分の皮膚保水量を維持するために
患部の水分量はおよそ60~70パーセントを維持して、湿潤環境を整えてあげます。
ただ、創傷部分の治療を目的とした軟膏を用いるときには、潤いを与えるものとは逆に、乾燥を促すものもあります。
使用方法をよく知り、創の状態に合わせて適時軟膏を使い分けるようにしましょう。
●褥創部分の水分量めやす
見た目に乾燥が進んでいる(ひび割れや粉をふいたような状態の)ときは、入浴後などに白色ワセリンなどを塗り、肌水分の揮発を抑えて潤いを保つようにしましょう。
また、イソジンを用いて、創傷部分の乾燥レベルを確認するという方法もあります。
イソジン100%を患部に塗布して、どのくらいの時間で消失するかによって、浸出液の量目安にします。
すぐに液の色が消えるときは、浸出液がかなり多い状態(80%以上)です。10~15秒くらいで色が消えれば60%前後の滲出液割合で適切と判断できます、
30秒経過してもイソジンの色が残っているときは、50%以下(浸出液がほとんどない状態)とみてよいでしょう。
●治療と湿潤のバランスを軟膏で実現するには
治療薬として用いる軟膏は、その機能を発揮する副作用も考えておく必要があります。そして薬剤の主成分だけではなく、軟膏基材を考慮して使用する薬を選ばなければなりません。
市販薬を使うときには、水分量を維持する効能にかける(60%以上の湿潤環境を保てない)ものもあり、複数の薬を調合して使用することになるでしょう。
また、創傷部分の滲出液が過剰気味になると、周辺の皮膚を汚染して感染の原因にもなりかねません。被覆材やガーゼを使って水分量をキープする方法をとりましょう。
〇褥創治療によく使われる軟膏は
患部水分量が乾燥気味な時は、オルセノン軟膏やゲーベンクリームがよく使用されます。いずれも水分含有率が60%を超えている軟膏です。
程よい水分量を保つために、この他リフラップ軟膏(23%)などの水分含有率を足し引きするように調合していくと、適切な水分含有量を作ることができます。
反対に、湿潤環境がウエットの場合は、水分吸収効果がある軟膏を用います。
特にユーパスタ軟膏(吸収率76%)やカデックス軟膏(吸収率370%)は、先のゲーベンクリーム等と合わせてよくつかわれる軟膏です。