入院期間が長くなる場合や、寝たきりの状態が長い高齢者介護をしている時、褥瘡が起こる危険を回避するにはまず、細やかな経過観察と体位変換が有効となります。
「褥瘡予防・管理ガイドライン」によれば、30度側臥床位のポジションは褥瘡を最も引き起こしやすい仙骨部分の圧を避けて、仙骨部・大転子部の間の殿筋で体重を支えることができる体位であると記されています。
ただ、寝たきりの状態が長期化すると、全身の筋肉量は低下します。特に高齢者に多いるい痩状態、または廃用性委縮が起ることで殿筋部分にも骨突出が表れ易くなります。
30度側臥床位を忠実に実行しようとして、直立姿勢のまま傾きを持たせると腰痛を引き起こす原因にもなります。
○患者の好む体位に応じて側臥床位を選ぶ
体位変換を行っても、患者が好む体位に戻してしまうという事は、介護・看護の場面では良く見かける光景です。ベッドのある方向や、寝ていて患者本人が楽だと感じる体位は人それぞれ異なります。
また、体位変換をした後の姿勢に違和感があり、安楽な寝心地ではないために自分で動くことができる患者は、より楽だと感じる姿勢に戻ってしまうのです。
●腰痛のある患者の体位変
褥瘡が原因で腰に痛みを感じる場合と、安楽な姿勢ではないために体に力が入り、ベッドに充分持たれる事ができない緊張から腰に力がかかり腰痛を引き起こすケースがあります。
腰に褥瘡を発症した場合は、側臥床位の角度や向きに合わせて、創部を更に圧迫しない工夫をマットレスや枕、クッションを用いて行います。骨の突出部は特に注意して、新たな創部を増やさない工夫が必要になります。
褥瘡が理由ではない腰痛の場合は、腰を伸ばした状態ではなく少し丸めた体勢を取りながら、通常回数より多めに体位変換を行いましょう。腰の痛みを感じる人は、同じ姿勢を取り続けることを非常に辛く感じます。痛みを和らげる手段として体位変換をこまめに行う事が大切です。
●腰の痛みと屈曲拘縮の関係
腰が痛くなると、反りと曲げによってその痛みを解消したくなります。この時、寝たままの姿勢で行うと、ベッドとの接触部分に大きなずれ力が働いて、皮膚の損傷を起こす可能性があります。出来る限りマッサージや温熱などで痛みを解消するようにしましょう。
関節拘縮が進むと、体を上手く屈伸することができなくなるため、体のゆがみが生じて骨盤のねじれや肩の落ち込みなどが起こり、自然な体勢が取れなくなります。これも腰痛を起こす原因となります。
拘縮状態をなるべく正常に近づけて、他の部分に余計な力が入らないようにすると、腰痛の解消にも効果が見えてくるでしょう。ポジショニングピローや枕を使って、全体を支えるように、角度を付けながら体位維持をサポートしましょう。