敗血症の致死率は三大疾病よりも高い 早期治療で改善を

慢性的な皮膚疾患創傷の一つである褥瘡は、単純な創傷治療のみで治癒できるものではありません。一見して傷が小さいと感じられる場合も、その深さや進行具合、細胞の壊死に対するケア次第では非常に深刻な身体状態を招く可能性があります。

○局所の炎症の徴候と感染

毎日の介護ケアを怠らず丁寧に行っていても、患者や寝たきりの高齢者の身体機能や健康状態によって、褥瘡は引き起こすリスクが異なるため、褥瘡発症を免れない場合もあります。その時に注意しなければならないのが、褥瘡の患部を治療することだけを目的とした看護ではなく、炎症箇所から感染症を引き起こしていないか。その徴候を見逃さないことです。

●褥瘡は感染症を起こしやすい

褥瘡は皮膚疾患ですが、慢性的に表皮や真皮を創傷している状態なので、病原体の侵入を防ぐ皮膚そのものがないため、容易に感染してしまい褥瘡周辺の組織にも感染を及ぼします。創傷の傷みの他に、全身の疼痛や発熱、腫れがないかを注意深く観察し、変調にいち早く気づくことが大切です。

●敗血症とは

感染原因となる病原体が体に侵入し、感染巣(褥瘡患部)から血流にのって全身に廻ると、菌血症を起こします。更に、その病原体が血中から臓器に悪影響を及ぼした状態の事を敗血症といいます。敗血症を発症すると、体温の低下や血圧低下、呼吸が荒くなるなどの症状が現れます。その場合、創傷ケアレベルの看護を継続していると命を落としてしまいます。なるだけ早く徴候を見極めて集中治療室で集学的治療を行わねばなりません。

○敗血症が重症化すると

病原体が臓器に達して敗血症が重症化すると、他臓器不全やけいれん、ショックを引き起こします。これらの症状が起こると致死率が非常に高くなり、重症敗血症の死亡率は25~40%とも言われています。日本人の三大疾病である脳卒中発症死亡率が9%、心筋梗塞が10%以下という統計と比較すると、その致死率の高さをうかがい知ることができるでしょう。

●全身感染を疑う 数値と検査

臓器に病原体が侵入すると、全身の炎症反応が高くなり、好中球白血球が病変部に集まり組織修復を始めるため、肝臓でCRP(たん白質)合成が多くなります。血中CRP値は、炎症がない通常の健康状態では0.3以下です。炎症反応の強さによって数値が上がり、10を超えると重度の炎症を疑います。ただ、CRP値はウイルス感染の場合あまり上昇しません。また肝臓機能に障害がある場合はたん白生成がうまくいかず、CRP値が上昇しにくいこともあります。血中検査の数値だけではなく、臓器の状態をCTやMRI画像で確認し相対評価を行う事が重要です。全身に病原体が廻り、敗血症を進行させて臓器不全や機能障害を重度化させる前に、小さな徴候を見逃さず、素早い判断と治療開始が最も大切です。