褥瘡をわずらった患者は、常に鈍痛や化膿の違和感、患部の熱っぽさを感じて日々過ごしています。
緊張と痛みから、わずかなことでいらいらしたり、不機嫌になったりする人もいます。
特に寝たきりの患者や高齢者は、感覚に障害がある場合に足の清潔まで気が回らず、皮膚がただれる・足のつめが伸びていることに気づかないなど、不衛生になってしまいがちです。
○足浴で褥瘡のケアをしながら
単に清潔な皮膚状態を保つという目的のためだけに、足浴を定期的に実施するよりも、要介護者とケアを担当する人が、より快適に穏やかな時間を過ごすための手段として、足浴を実施しましょう。
●足の血行をよくして褥瘡を予防
足浴をすると、足の皮膚をすっきりと洗浄することができるだけではなく、血行が良くなります。すると、体が温まって痛みが和らぐという効果が期待できます。
足を湯につけるだけではなく、足浴で人の手で以ってほぐしてあげると、ケアを通してその人の優しさも感じられます。
おせわをしてくれる人に対して、優しい感情を抱くきっかけになり、緊張もほぐれるでしょう。
●足浴で足の状態を確認する
普段は靴下や褥瘡予防カバーを用いて、ずれ力から足を守っているため、素足の状態を確認することがなかなかできません。
素足の状態を見ると、つめや皮膚のしわ、乾燥状態、においなど、単に清潔にしていないという理由ではなく、何かの炎症兆候や疾病の可能性がないかを探ることができます。
特に、足の指の間やつめの状態をしっかり確認するために、足浴は効果的です。時間を掛けてゆっくりと足湯につけて、細かい部分を確認しましょう。
●関節や皮膚の状態を確認して褥瘡を防ぐ
足浴を行うときは、膝下から足先までを洗浄するようにします。このときに、褥瘡の好発部位である踵に兆候がないか、褥瘡を発症しているなら壊死細胞が無いかなどを確認しましょう。
あわせて、足首や足の指といった関節の可動域をチェックします。関節は動かさなければ拘縮が進みます。また動かすという行為によって、感覚が鈍っていないか・痛みは無いかを確認しましょう。
○湯に足をつけられない場合の足浴方法
湯桶に足を入れられない患者もいます。寝たきりの人などは、大きめのタオルをお湯でぬらして足を覆い、ビニールと敷物をかぶせて防水・保温しましょう。
桶をビニール素材のやわらかいものにすると、寝たままの姿勢や車椅子に乗っている状態に合わせて変形させることができるため、非常に便利です。
○足浴が終わったら
乾燥を防ぐために、保湿クリームやローションを塗布しましょう。そして、足の指同士が密着しないように、ガーゼや五本指靴下を使います。
足浴は、ケアをする人と、介護を受ける人が一対一で向きあって、心通わせることができる時間です。緊張をほぐして安らげる時間にしましょう。
参考文献:新床ずれケアナビ(日本在宅褥瘡創傷ケア推進教会編集2016年)