ずっと寝たきりの状態にある人のお世話は、体の状態と合わせて褥瘡の発生に注意をしながらケアを行わねばなりません。そのために、体圧を軽減する機能をそなえたマットレスを導入して、日々快適に過ごしながら褥瘡の発生リスクを減らす取り組みを続けていることでしょう。
介護を必要とする人の体の状態は、日々刻々と変化します。その変化に合わせて福祉用具を上手く利用するための知識も求められます。福祉用具を取り入れる際に注意しなければならない点も理解しておきましょう。
〇介助を楽にするラバーシーツ
寝たきりの人や、離床が難しい(絶対安静のような)患者のケア用品として、かつてはラバーシーツが重用されていました。ラバーシーツとは、PVCやビニールの素材で作られた防水シートで、特に失禁などによる腰・腹部周辺のケアを楽にすることができる福祉用具です。
失禁や汗汚れを起こしても、シーツをきれいに拭くだけできれいにすることができるので、介助を行う人にとってはありがたいシーツといえます。
しかし、その素材の特性ゆえ、患者にとってはムレやすい状態が続き、皮膚が浸軟してしまうリスクもあります。
●防水機能と快適性能を合わせたシーツの登場
現在は、撥水加工をした繊維で作られた防水シーツも多く、その性能も高まっています。元来使われていたラバーシーツは、素材も硬く湿気がこもりやすいという難点がありましたが、今多くの現場で使われている防水シーツは、やわらかくて薄く、軽いのが特徴です。取り換えが簡単で、清潔な状態を保ちやすくなっています。
〇マットレスとラバーシーツの使い方に注意を
寝たきりの人は、多くが体圧分散マットレスを使用して、褥瘡の予防を実践しています。しかし、マットレスが汚れても頻繁に取り換えが利きません。汚れを防止するためにラバーシーツを併用することもありますが、マットレスの上にシーツを敷く場合は、褥瘡が発生するメカニズムを振りかえって、併用による褥瘡リスクを排除する必要があります。
●シーツの使用で起こりやすい「ハンモック現象」
体圧分散マットレスは、その特性によって快適な状態を作るための機能を備えています。しかし、そのマットレスの上にシーツをかぶせると、体圧がかかる局所が移動して、シーツの滑りが生じます。
沈みの軽減や分圧というマットレスの効果を発揮しづらくなり、最も体圧が集中する背骨部分を、
両端で釣り上げたようなポジションになってしまうリスクが生じます。これがハンモック現象です。
この体制では、背部や後頭部にずれ力を生じやすくなるので、反対に褥瘡発生リスクを高めてしまいます。
●ラバー(防水)シーツを部分使用する
マットレス全体を覆うように防水シーツを敷くと、面と体の双方がシーツ全体に影響します。そのため防水シートは、臀部や背部の一部に利用するのがベストでしょう。
ハンモック現象を避け、湿気と汚染に悩む人のことを考えて介護を続けるためにも、体圧分散マットレスの一部に防水シーツを使いながら、介護する人もされる人も、より良い状態を探っていくことが大切でしょう。