褥瘡は、発生させないための予防が大切です。一度褥瘡が起こると、完全に治癒させるまでに時間がかかります。完治までの間、患者は「ヒリヒリ」や「じりじり」とした皮膚損傷の痛みに耐えながら日々を過ごすことになり、ケアが十分でなければ悪化させてしまうかもしれません。
全身管理を徹底して行うこと、これが褥瘡予防には不可欠です。発生した場合も、初期の軽度レベルに留め、常に皮膚の状態を観察しておきましょう。
〇褥瘡の始まりに注意 ケアポイントは
褥瘡は、体圧を分散させれば予防できる、と考えている人もいますが、必ずしも体圧コントロールだけで防ぐことができるわけではありません。総合的な身体管理と、日々のケアが相まって、褥瘡の発生を予防できるのです。
●体圧の管理と褥瘡
褥瘡の発生は、皮膚の赤みや水疱に始まります。単にかぶれや発疹の様にも見える症状ですが、体圧の状態や安静時の姿勢を振り返り、定期的に除圧することが、何より褥瘡ケアに効果的なことは間違いありません。
福祉用具のなかにも、ポジショニングサポートや体圧分散寝具が多くありますが、本人の楽な姿勢やベッドの向き、拘縮の有無など、環境や身体状態にも注意しながら体圧をコントロールする必要があります。
●褥瘡と栄養バランスにも関係が
体に十分な栄養を備えていれば、免疫機能や損傷の回復機能が高まり、皮膚の修復もスムーズに進むため、局所の軽度な褥瘡を早めに治癒することが可能です。ただし、経口摂取が十分でない場合、皮下脂肪が減って骨の突出が顕著になります。また、低栄養な患者の体は、アルブミンという成分が不足して浮腫を起こしやすく、皮膚組織が脆弱になっていきます。
体重の減少が始まり、痩せが気になる場合は、褥瘡の予防と健康な身体状態維持のため、栄養評価を実施しましょう。
●皮膚のハリと褥瘡の始まり
状態の良い皮膚とは、ハリがあってキメが整っていること。キメやハリを維持している肌には十分な保湿力と弾力が備わっていて、外力や体圧が多少かかっても、跳ね返すことができる肌の強さがあります。
乾燥が進んで硬く、ハリのないドライスキン状態になると、皮膚は外力の影響を受けやすく、バリア機能も低下します。保湿力を担うセラミドが不足した肌は褥瘡を起こしやすく、水分が蒸発しやすくなるため、保湿クリームやローションを使って潤いを保つことが大切です。
皮膚のただれや発赤は、褥瘡の始まりを知らせるサインかもしれません。そのサインを見逃さずに、レベルが悪化する前に全身の状態を評価し、必要な処置を適時導入しましょう。そして、可能な限り早く処置を開始し、重症化する前に褥瘡を治癒するように心がけましょう。