自分で箸やスプーンを手に取り、自分のタイミングで食事を口に運べる人は、一口の適量や飲みこむまでのそしゃく、食べ物の固さや味を無意識に感じ取り、スムーズに食事を行うことができます。
しかし、介助が必要な人は、食事を口に運ぶタイミングや量をすべて介助人にゆだねることになります。
楽しく無理なく、食事が進むように、食事介助を要する寝たきりの人に対して、どのような点に気を付けるべきか。注意すべきポイントを知っておきましょう。
〇口から食べ物を摂取することが大切
寝たきりの生活を毎日繰り返している人は、日常の中で刺激を感じたり、楽しみだと思える物事がどんどん減っていきます。
また、安静にする時間が長くなると、食欲も減退し、消化器官の働きが鈍化していきます。
栄養バランスを考えた食事を口から取り入れるということは、寝たきりで過ごす人の生活リズムを整え、一日のサイクルを規則正しく過ごすきっかけになります。
そして、好きなもの食べる楽しみを感じ、前向きな気持ちを維持することにもつながります。
そしゃくや嚥下にわずかな問題が起こると、必要なカロリーや水分量を点滴で投与すればいいと考える人もいるかもしれません。
しかし、長く続く点滴は、合併症の起因となります。体内の臓器を動かし、人間らしい生活を営むために、可能な限り、経口摂取を続けましょう。
〇寝たきりの人それぞれに合わせたペースと量で
食べ物を口に運ぶスピードと量、ものの固さが、食事の介助を行う上で最も注意すべき点です。口の開き具合と、そしゃくする力は、介助を必要とする人それぞれ異なります。
モグモグの動作や、飲み込む量を見ながら、一口の量を少量からスタートして調整していきましょう。
気分がすぐれない時や、体調が思わしくない時は、その食事量と食べる意欲がいつもと違うはずです。
また、口内炎ができたり、のどの腫れや違和感があると、いつもと同じ一口の量でも要介護者は多いと感じます。
無理に食事を進めようとすると、嚥下がうまくいかずに窒息する可能性もあるので、食事の様子を観察しながら、寝たきりの人の体調や機嫌を察知するようにしましょう。
〇寝たきりの人の脳を働かせる食事
人間は、安静状態が長くなると、体を動かすことによっておこる脳の刺激が減少します。
体の一部を動かして、脳に信号を送る一つの動作として見ると、口から食べることはとても有効です。
食べ物が口に入ると、その味を感じて、ものの固さを無意識に判断しようとします。
消化を促すために唾液が分泌され、スムーズにのどを通す為にかみ砕いて飲み込みます。
これら一連の無意識な動作は、その都度脳に刺激信号となって伝わっています。
特に顎を動かすと、脳の活性化につながるといわれていますので、噛む・顎を動かすといった動作を、わずかでも食事で取り入れましょう。
決して無理強いをせず、食べるペースを寝たきりの人に合わせて、ゆったりとした気持ちで食事介助を行いましょう。