褥瘡が発生しやすい部位の病態評価と見方

人の体は、骨格と筋肉、脂肪、そして体表を覆う皮膚のバリアによってその形を維持しています。体の中心に位置する骨盤、大転子部と、後頭部、肩甲骨はなかでも太く大きな骨の代表です。
骨が大きく突出している箇所は、全般的に筋肉や皮下脂肪が少なく、皮膚が非常に近いという特徴があります。
褥瘡はこのような骨の突出部であり、かつ衝撃や圧力を吸収する筋肉や脂肪が少ない部位に現れやすいと言えます。


〇褥瘡の発生と骨の突出部位
褥瘡が発生する原因は、基本的に「骨の突出」と「一定の姿勢保持による圧迫」です。
前述した骨格の大きな部分とあわせて、仙骨・尾骨部分も褥瘡が発生しやすい(好発)部位にあげられます。
腰周りの褥瘡は、安静時の姿勢を保つことに加えて、皮膚のたるみや摩擦によるずれ力によって、創が押されたり引っ張られたりすることで起こります。
ずれ力が大きな原因となる褥瘡は、深部にポケットを形成するリスクが高く、発生を見逃し、適切な処置がされない可能性を含みます。

 
〇身体状態と褥瘡の発生
褥瘡は、骨が突出した部分をケアすれば、発生を予防できるといった単純なものではありません。
日常を過ごす環境や栄養状態、年齢など個別差も大きくなります。

 
●皮膚状態と褥瘡の関係
加齢によって痩せが進行する人は、褥瘡発生リスクが高くなります。
痩せて筋肉や脂肪が減少すると、皮膚がたるんで引っ張られる力にそって伸び、皮膚が刺激を直接に受けます。
更に、痩せて骨が突出した部分は、その骨を中心として外力によって皮膚が引っ張られるので、骨の両側や広範囲にわたって褥瘡が起こりやすくなります。
外傷が認められなくても、皮下組織が損傷して褥瘡を起こすことが考えられるので、体位変換時や移乗の際に、注意を払うことが大切です。

 
●栄養状態と褥瘡部位の状態
皮膚組織がズレや圧迫によって損傷しても、その後に血流が適正に保たれ、各組織や細胞、部位に栄養を供給することができれば、その後の治療によって症状は改善されるでしょう。
しかし、疾患や他の治療に必要な投薬によって、健常なときの様に栄養を体に取り込むことができない場合、特に崩壊した組織の修復を促すたんぱく質の摂取量が少ないときは、褥瘡の経過も良くなく、更に深部へ創が進行することも考えられます。

 
〇褥瘡の経過と発生しやすい部位の予後観察
一度発生した褥瘡は、完治をしたのちに再び褥瘡になりやすいので注意しましょう。
看護の環境や好みの姿勢は変えにくいため、注視して治癒した同じ場所で褥瘡を再発することも珍しくありません。
また、完治した褥瘡の皮膚の組織は、修復したとはいえ完全に元に戻らず、表皮が薄く乾燥しがちです。
もろく薄い皮膚の部位は、外力を通常よりも受けやすくなります。
一度発生した部位は、褥瘡の兆候を見逃さないように観察を行いましょう。