病気やけがの治療をしている人は、寝たきりで過ごしたり、体の一部または全部を動かせない状態が続きます。しかし、体を動かすことなく安静にしている間も、人間は生命維持に必要なカロリーを消費しています。
身体の疾患や老化によって寝たきりの状態になったひとも同じです。体内の基礎代謝によって消費するカロリーに加え、健康維持に必要なバランスのよい食事をとることを心がけねばなりません。
〇消費カロリーはどのくらい?
人間が一日に必要なカロリーは、いったいどのくらいなのでしょう。
もちろん、年齢や性別、仕事の内容など環境によって人それぞれ異なりますが、大切なのは消費カロリーと摂取カロリーのバランスです。
●基礎代謝基準値を用いたカロリーの計算
日本人の基礎代謝基準値は、厚生労働省情報サイトで公開されています。
(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-004.html)男女・年齢に分けて基礎体重と基礎代謝量(カロリー)を図表化しています。
これによって、日本人の標準的な体を基準として、体重や生活習慣レベルに沿った基準値を知ることができます。
毎日の生活に必要なカロリーを、基礎代謝基準値を用いて計算してみましょう。
基礎代謝基準値×対象者の体重×身体活動レベル (基礎代謝基準値は年齢・性別で合致した値を用いる)で算出します。
身体活動レベルとは、一日の中で体を動かす程度を表します。
身体活動レベルの値は、以下のもののなかで対象者の活動状態に合わせたものを選びましょう。
身体活動レベル 高い…1.95 一日中よく動き、運動量も多い(激しい運動)
ふつう…1.7 仕事でほどほどに動く スポーツは軽め、家事を行う
低い… 1.45 あまり活動をしない、座った姿勢で過ごす時間が長い
寝たきり…1.1 一日中横になっていてほとんど動かない
●体重がわからない寝たきりの人は
ずっと寝たままの姿勢で過ごしているから、ずいぶん体重を計っていないという人もいるでしょう。一般的標準体重は、「身長×身長×22(単位メートル・キログラム)」で求められますので参考にしてみてください。
〇消費カロリーと摂取カロリーのバランスが大事
寝たきりの人は、経口摂取量が減少して痩せやすい点に注意が必要です。
体を動かさない状態は、筋肉や関節に刺激が少なく、消費カロリーは少なめです。しかし、消化機能も低下して食欲が湧かなかったり、一度の食事量が減りやすくなったりします。
食欲を維持する、食べる楽しみを感じてもらうという目的で、嗜好品(おやつ)をメニューに加えたり、食後におやつタイムを作るのは効果的です。
しかし、食事の量が少なくなりがちなうえに、全体の摂取カロリーを底上げしてしまうことも考えられます。
摂取カロリーが消費カロリーを上回ると太りやすくなりますし、脂肪が増加します。
体に必要な分の消費カロリーを維持しながら、必要な栄養素をバランスよく取り入れるのが理想です。
中でも、体内細胞の形成や筋肉維持に欠かせないたんぱく質を、積極的に摂取できれば尚良いですね。経口摂取で不足しがちな栄養素は、補助食品やサプリメントを活用するという方法もあります。
寝たきりの人の痩せ傾向に気を配り、体に必要な栄養と消費カロリー摂取を意識した食事を提供しましょう。