全身症状が現れる感染症のなかでも、重症化する傾向が強いのが敗血症です。きっかけはほんの些細な感染症の場合も多く、体の一部分で起こっている感染がよもや、全身のあらゆる器官や臓器に影響を及ぼすほど深刻になるとは、想像できない人もいるでしょう。
敗血症は特に、免疫が備わっていない小児や免疫機能が低下しやすい高齢者に多く発症しやすいのですが、健康に毎日を過ごしているはずの成人にも発症の可能性があります。
〇敗血症の危険 身体状態の変化を見逃さない
一部の感染症が原因となって全身に感染症状が広がるとき、かならず身体に現れるサインがあります。そのサインを見逃さないようにしましょう。
●意識障害のあらわれ
精神状態の変化と意識障害。看病や介助をしている人にとって判断しやすいのがこのような「反応」に現れるサインです。
話しかけても返事をしない。普段なら気分を害して怒りそうな言葉を投げかけても反応が薄い、返事が緩慢、スムーズに言葉が出ていない(しゃべりづらそう)、話している内容や言っていることが支離滅裂で会話にならない、うわごとのような言葉を発している…など、不安定な精神状態や意識障害があるのではないか、と疑いたくなるような様子があれば注意するべきでしょう。
●体温の変化と敗血症の兆候
体の局部で感染が起こったときや外傷性損傷があったとき、周辺や創傷面が赤く腫れぼったくなる、また熱を帯びて脈打つような感覚になることもあります。
全身に感染が広がっていくと、同じように体温の変化が現れます。ここで注意したいのは、体の免疫反応による体温の上昇とあわせて、体温の低下(低体温症)が敗血症によっておこることもあるという点です。
36度未満の低体温状態は、体の免疫機能が正常にはたらかなくなっている、重篤な状態と考えていいでしょう。本来なら体温を維持することができるように、体のあらゆる臓器がそれぞれの役割を担っています。その機能が失われつつある・正常ではなく血流阻害や血流不足が起こっている状態だといえます。
●体に現れる敗血症の変化
体温や意識の変化と合わせて、患者に現れやすい変化は、患者の体の色変化です。血流不足によって低体温になると、手足など血管が細い部分や、首から顔にかけて蒼白くなります(顔色が悪くなる)。
臓器不全(肝臓や腎臓に)障害をおこした身体は黄疸が出始めます。体内の老廃物を排出する機能に障害が出ると、全身がむくみやすくなりますし、尿の量も減ってきます。
敗血症の疑いは、看護観察と生検検査のデータや検査数値の推移変化が裏付けとなります。しかし、看護や介護をしている人が見た印象や、話したときの感覚など、数値で測ることができない変化も十分に早期発見に役立ちます。
わずかな違和感やいつもと違う反応・意識障害を感じたときは、早めに医師へ相談して状態を判断してもらいましょう。