床ずれ治療のための入院と事前準備

自宅で看護や介護を続けている場合、健康管理に問題はないか、行うべき処置がしっかりできているかどうかなど、定期的な観察をかかりつけ医にお願いしているでしょう。
自立した生活が可能な患者なら、床ずれの起こるリスクも少なく、身体機能や疾患の経過観察が中心になりますが、体の一部や全部が動かせない患者の場合は、可動域の確認や褥瘡発生の観察が加わります。
在宅介護ではケアが難しくなったら、一度入院してしっかり看護してもらい、また在宅ケアにもどるという方法も検討すべきでしょう。


〇入院前にしておくべきことは
今より健康な体を取り戻すために入院を検討するのですから、今不具合に感じているところをキチンと明らかにして、改善ポイントをはっきりさせておきましょう。
特に、傷の深部が見えづらい床ずれの治療をどのように行うか。これは医師の判断に基づきますので、その判断をする材料として、傷の経過や日々の処置内容、ポケットの大きさや形など、写真に残しておくといいでしょう。
また、基礎疾患があるなら常用している薬や、食べ物のアレルギー・摂取禁止されている成分も病院にきちんと伝えておきます。

 
●入院に備えた日々の過ごし方
床ずれは、毎日の洗浄と処置がポイントです。入院の予定が立ったら、デブリードメントと洗浄を欠かさず行い、創傷部分の観察を続けながら様子を記録しておきましょう。
移乗や移動が多くなることに備えて、貧血に注意し、栄養状態をできるだけ改善させておくようにしましょう。

 
〇入院して行う床ずれの手術は
肉芽の形成が遅く、傷の治るスピードが遅い患者のために、入院をして傷の治癒を早める手術と治癒を行います。行われる手術は、皮弁による再建が主流ですが、手術の経過予想をしながら、患者にとって再発しにくい方法や、再発に対応しやすい手術療法を採用します。
入院時の栄養状態や、細胞育成に必要な身体の代謝機能も考慮して、必要な療法を検討します。肉芽が育ちにくいと判断した場合は、十分に形成してから局所処置をするケースが多いです。

 
●床ずれの治療だけでなくトータルケアを行う
在宅に戻ってから、まもなく床ずれを起こしてしまうのでは、入院治療の効果も薄れ、入退院を繰り返すことになってしまいます。
在宅でも、介護を行いやすくなるように、失われた身体機能を取り戻す処置や手術を行えるのが、入院治療のメリットでしょう。
例えば、関節の拘縮が進んでいる患者は局所の体圧と荷重が大きくなります。治療して退院しても同じ箇所に床ずれを起こすリスクが高まるので、腱切離術などで拘縮解除して、褥瘡を起こしにくい配慮と処置を検討しましょう。