敗血症リスクに対する考え方と取り組みは、ここ30年ほどで大幅に変わってきました。かつては、血液中の菌炎症を軸に処置対処をしていましたが、現在は「全身症状を伴う感染症とその疑い」がある患者に対して、敗血症の措置を検討する動きに変わってきています。
〇敗血症の患者に対する診断のむずかしさ
基礎疾患の治療や外科的措置、投薬等の内科的措置を多角的に行っていると、薬による副作用や、症状の改善・後退が起こるため、全身に現れた敗血症症状が疾患によるものなのか否かの判断がしづらくなります。
体温の上昇と降下、心拍数の上昇、白血球成分の乱高下など、初期段階で敗血症を疑う要因はいくつかあります。しかし、それが感染によるものなのか、薬の副作用なのかを、どのタイミングでジャッジするかはとても難しいです。
〇敗血症患者数のうち死亡確率は
入院中の患者が敗血症を発症し、死亡する率は全体の3割程度、敗血症ショック状態になる人はおよそ5割という統計があります。
疑いがあれば、その病態の変化の原因を根本から特定して、その要素を取り除かねば、患者の体は回復しません。
〇敗血症を完治する難しさ
ごく早い段階で、敗血症を疑うに至る疾患と、敗血症症状がありながら、なかなか特定するに至らない状況があることに、敗血症患者の数が減少しない理由があると思われます。
実際には、敗血症の元である細菌が全身に回っていることで起こる異変も、疾患の治療中に起こる一時的なものだと判断されてしまえば、その発見が遅くなり、症状もよくならず、後遺症をのこすケースも少なくありません。
〇体内変化を見逃さず患者数を減らす取り組みを
全身炎症反応(SIRS基準)から、全身症状を伴う感染症(または疑い)にターゲットを広げて、敗血症の疑いがあれば、早期に対処するガイドラインを元に柔軟な対応が求められます。
一部、専門外の疾患部位や、褥瘡深部の炎症反応を正しく診断するために、エコー診断やMRI画像診断を行う場合もあります。
世界的にも、2010年あたりから、重症敗血症患者の救済と減少に対する前向きな取り組みが進んでいます。しかし、日本での診療と違い、海外の患者は一定水準の医療を等しく受けているわけではありません。
●敗血症に対する取り組みが必要なのは
敗血症患者の中でも、腹腔内疾患の患者に死亡率が高い傾向があります。医療が充実した先進国では、投薬や病原特定も容易です。低所得者層の多い国や、発展途上の国では、感染症そのものの治療も満足に行えない人も多いのが実情です。
日本では近年、これまではあまり取り上げられることが無かった敗血症に対しての取り組みが始まったばかりです。
疾患と合わせて、体の免疫が低い乳幼児や高齢者の体調変化と検体の変化を見逃さずに継続させることで、敗血症そのものの患者数を減らすことにつながるでしょう。