介護にはいろんな注意ポイントがあります。介護を必要とする人が、いかに自分らしく、自立した生活を送る能力を維持しながら過ごすか。これが一つのおおきな目安です。
ただ、身の回りのことを自分で行えない、介助が必要な人にとって、これはとてもハードルが高いだけではなく、介助が得られない時間に起こるリスクも考えなければなりません。
特に、姿勢維持を自由に行えない場合、同じ姿勢で過ごす時間が長くなるため、床ずれを起こしやすくなります。この床ずれこそ、他の運動を制限する要因になるため、十分に配慮しなければなりません。
〇1:床ずれの発生のリスク対策を
床ずれを起こす原因は、大きく分けて「体圧の局所圧迫」と「血流阻害」です。同じ姿勢で長時間過ごすと、体の重みで圧迫される箇所が生まれます。圧迫から微動したときのずれ力が加わると、さらに床ずれを起こしやすくなります。
圧迫して血流が滞ると、その部分の細胞が十分な栄養を得られなくなります。また、血液の流れによって運ばれるはずの老輩物質がうまく流れずに、滞ってしまいます。
〇2:体を動かす環境対策を
老化による運動機能の低下によって、運動する機会が減ると、体は見る見るうちに動かしづらくなります。運動量が少なくなると、前述したように血液の流れも悪くなります。
体の一か所を動かしづらいなら、他の残存機能は意識して動かすように、リハビリなどを取り入れるようにしましょう。無理に激しい運動をする必要はありません。
手足をピンと伸ばす、関節を曲げる、足先や手先に力を入れる・抜くを繰り返す、など、筋肉や関節をわずかに動かして緩急を取り入れるだけでも効果があります。
〇3:体に必要な栄養対策を
栄養をしっかり取ることは、健康な体づくりに一番重要です。ただ、体の動きが少なく、寝たきりの場合ではおなかも空きませんね。食欲が減退し、十分な量を食べられなくなるということも考えれます。
経口摂取量に限界がある、嚥下作用やあごの力が弱く食事が十分に取れない、という場合には、栄養補助食品を取り入れて体の細胞に栄養を届け、体の中から床ずれの対策をとりましょう。
〇多角的な注意が床ずれ対策になる
床ずれを起こさないための対策といえば、ポジショニングと除圧を連想する人も多いでしょう。
もちろん、圧迫を取り除くことは大切ですが、それだけでは十分といえません。
定期的な体位変換と合わせて、ストレスのない介護、健康を中心に考える体づくりが大切です。栄養状態が良ければ、多少の圧迫があっても床ずれになりにくく、運動機能を少しでも高めておけば、自分のタイミングで除圧ができるようになる期待が持てます。
完全介護の現場では介護を担う人が、一時的な介助を必要とする人は本人とその家族が、自立した健康的な体を理想に持つことで、意識も高まります。目の前の問題解決と、理想を目指したときの問題解決の双方から、要介護者の日常をサポートしてあげましょう。