床ずれが起きると、「介護の怠慢だ」といわれていた時代があります。寝たきりで介護を必要としている人や、麻痺がある身障者に褥瘡が発生する可能性は高まりますが、患者一人ひとりの体調や栄養状態、身体機能によって床ずれのおこる傾向も違います。
万全を期してもおこってしまうのが床ずれ。ならば、いち早く発見して、その創傷を進行させない処置がとても大事になります。
○床ずれは初期段階で完治させたい その理由
床ずれは、手術痕や外傷と明らかに異なります。急性の創傷なら、その傷を消毒し、傷口を閉塞させるための薬を使用すれば、自然治癒力も手伝って回復するでしょう。
床ずれは、栄養状態や体の動き、発生要因など様々な要因が絡み合って発生します。これらの条件が全て改善されなければ、治療期間がどんどん延びてしまい、創傷も進行してしまうのです。
●初期(軽度)レベルと重度レベルの治療日数
床ずれの発生因子をそれぞれ数値化して、褥瘡レベルを測るOHスケールによれば、褥瘡発生危険度は軽度・中度・重度の三段階に分けられます。
初期段階の床ずれの場合、治療にかかる日数は平均して40日といわれます。床ずれの発症確率も、統計全体の25パーセント以下程度です。
しかし、このレベルが高くなればなるほど、治療にかかる期間は増大していきます。危険因子高度レベルの場合では、褥瘡発生確率は66パーセントほど。そして、治療に要する期間は平均で173日にもなります。
できるだけ早く、発生因子を取り除きながら、傷を深めずに完治を目指すことがもとめられるのはこのためです。
○床ずれ発生の初期ケアは
まず床ずれがおこっているのかどうかを観察します。床ずれは、皮膚のズレ力によって、皮下組織が損傷し、表面に赤い斑点や水疱が現れるという特徴があります。
この兆候を見逃さずに、また赤みが生じていると感じた部分を体圧で押し続けない様に配慮しなければいけません。
●肌の摩擦やこすれを重点的に
高齢者に床ずれが多くなるのは、皮膚の乾燥と皮下組織のやせ具合が関係しています。
皮膚に潤いが無ければ、皮膚そのものにハリがなく、健康な状態とはいえません。そして、皮膚の乾燥が進めば外的要因や刺激にも弱くなります。
皮膚のきめを整えて、ハリをたもつケアを行えば、ドライスキンの状態を脱し、皮下組織の水分と弾力で圧迫を和らげることができます。
●体圧に注意 体位変換で除圧を
体の一部分を点で圧迫するように、寝具に押し付けるために起こるのが床ずれです。よって、寝たままの姿勢を保持して、どこにどれだけの圧力がかかっているのかということをしっかり把握して、除圧を繰り返し行うことが、初期の褥瘡を進行させないポイントになるのです。