体に切り傷や擦り傷があったとき、あなたはお風呂でその傷を洗いますか?傷口がお湯でしみて痛くなりますし、傷部分が浸潤してふやけてしまうので良くないと思っていませんか。
褥瘡ケアを行う場合、優先されるのは「傷口を清潔に保つ」ことです。そのため、入浴をして傷をきれいに洗浄するのはとても効果が高いと考えられています。
○入院中の褥瘡患者に行う入浴は
褥瘡が発症する・ステージが進行する人は、体の一部または全身を自力で充分に動かすことができないケースが大多数なので、介助を受けながらの入浴になることがほとんどです。
病院に入院している時に褥瘡が発生した場合や、褥瘡のステージランクが上がって治療を目的に入院している人は、介助人または看護師の手をかりながら入浴を行います。
●保護テープやフィルム材を使って入浴
入院中や施設での入浴は、患者が湯船に入るたびにお湯を張り替えると時間がかかってしまうため、傷口を保護するために防水フィルム材や保護テープを使って入浴するのが通例です。
ただ、これはお湯を汚さないという目的のために使用するのであって、決して患部をお湯につけることを防ぐためでは在りません。
全身の洗浄をし、湯船に使ったあと、上がる前には保護材を取り除き、患部を洗浄します。
●入浴湯で感染しないかという心配は無用
褥瘡のケアは、無菌状態で行う必要はありません。よって、減菌水を使うなど神経質にならなくても、水道水で問題ありません。傷の周囲を洗浄するときは市販している弱酸性の石鹸やボディソープを用いますし、石鹸が傷口に触れてもさほど問題にはなりません。
○在宅介護の褥瘡患者に行う入浴は
訪問介護サービス等を利用して、入浴をすることが多いでしょうが、家族が入浴介助を行うときは次の点に注意しましょう。
●褥瘡患者が入浴するお湯の温度に注意
患部を清潔にするために洗浄は欠かせませんが、創傷部分を石鹸などで無理に洗う必要はありません。皮膚と創傷部分の洗浄は、常温ではなく微温湯のほうが効果はたかまります。
入浴湯の温度は、体の細胞が最も活性化しやすい38度前後が最適です。
●褥瘡患者の入浴が一人なら保護材も不要
前述したとおり、創傷部分にフィルム材を貼って保護するのは、入浴湯が汚れないようにするためです。よって、褥瘡患者の入浴が一人の場合は、フィルム材などを使用しなくても良いでしょう。
創傷部分を開放してお湯につければ、患部の血行も良くなります。傷口の汚れがお湯に行き渡った入浴湯も、出る前にシャワーで全身を流してあげれば充分に汚れを落とすことができますので、特に創の部分はしっかりとシャワーを当ててきれいに洗浄してあげましょう。
褥瘡がある人にとって、患部を清潔に保つことが最優先です。消毒よりも洗浄を重点的に行い、しっかりと水気をふき取ってスキンケアを平行して行いましょう。