褥瘡(床ずれ)の予防を考えるとき、まずは安静と体位変換のタイミングをどのようにバランスよく、無理なく行うか、という点に注意が行きがちです。
もちろん、体圧による局部の圧迫は、褥瘡を引き起こす大きな要因であることは間違いありません。特に、骨の突出部はピンポイントで体圧が集中しやすく、褥瘡リスクが高まるため、定期的に体位変換をしながらずれ力に配慮することがとても大切です。
しかし、元から備わっているからだの基礎体力や回復力を高めなければ、どんなに予防手段をとってもその頻度が高まるばかりで、褥瘡リスクを根本的に下げることにつながりません。
○栄養管理の重要性
一日のほとんどを寝たきりの姿勢で過ごす人は、基礎体力の消耗も減り、運動をしないために筋力が低下してきます。代謝が落ちておなかもすかず、食べたいという欲求そのものがそがれてしまうこともあります。
●褥瘡治療の柱となる栄養管理
体の不自由さに悩まされている、また褥瘡のように継続的な外傷の痛み・鈍痛があると、気分が優れずにあらゆる意欲が低下しがちです。食事の摂取も例外ではありません。しかし、体内に栄養を充分取り入れて、血液の循環が良くなると、感染に強い体に変わっていき、肉芽細胞や皮膚層の形成スピードも速まります。
体に必要な栄養分をしっかりと補いながら、細胞の形成に効果があるたんぱく質を多く摂取できるような栄養管理が、褥瘡を早期に回復させるポイントのひとつといえるでしょう。
●褥瘡患者の栄養管理方法
身体の状態によって、口から食べ物を取り入れる(経口摂取)ことができるか、栄養をどのように取るのが効果的かを、まずはしっかりスクリーニングする必要があります。やマヒによる意志疎通を図ることができるか否かによって、食事のとり方が変わってきます。
体重の減少や食事摂取量が減っているときは、栄養補助食品などを活用して、身体維持をまずは優先して栄養管理を行います。
定期的に身体計測と血清アルブミン値などの指標を元に、栄養管理の効果を確認しながら、栄養障害がどの程度かを見極めます。
不足している栄養素やその取り入れ方は、専門的な知識を有している管理栄養士などと一緒に考え、モニタリングしていくようにしましょう。
○栄養値の計測とその推移を観察する
褥瘡患者の栄養管理を行ううえでは、標準的な数値にまで押し上げることが目標ではありません。寝たきりの高齢者など、経口摂取が難しい・意識レベルが低い患者は経口摂取が難しいため、体重減少も進み、低栄養状態になっている可能性があります。
健康的な体を維持する栄養値を目指すのではなく、以前の数値からどれほど上昇して、どれだけ改善されたかということに注目して管理を続けましょう。
決して無理のない範囲で、専門家の指導を受けながら、栄養管理を長い目で見て続けていきましょう。