長らく入院することを余儀なくされる重症疾患の患者さんや、長期療養が必要な患者、また、基礎体力の低下と老化からくる寝たきりの高齢者の人など、長期入院の理由は患者の状態によって異なります。
しかし、寝たきりの時間が長く、体を自由に動かせない、または動かすことができない環境の中で、看護の経過観察として最も注意しなければならないのが褥瘡の発症でしょう。
仮に、疾患や病気発症によって治療をするために病院へ入院した患者が、その期間に褥瘡を引き起こし、治療を迫られたとき、どのくらいの費用がかかるものなのでしょうか。
○入院中の褥瘡発生 診療科と治療
緊急入院や、大病院での外科的治療を目的として入院をする場合、その入院期間の長さと褥瘡の発生リスクには一定の関係性があると見ていいでしょう。
もちろん、近年は日本褥瘡学会の指針に賛同する医療機関もふえ、床ずれ・褥瘡の発生を予防するための看護計画や福祉補助具を用いて、発生させない取り組みが行われています。しかし、それでも患者の病状・容態、入院中のすごしかたによっては、床ずれを引き起こす可能性がゼロとはいえないのが現状でしょう。
●褥瘡の治療を目的とした治療も
たとえば寝たきりの状態で在宅ケアを中心に受けていた患者や、車椅子生活を送りながら自立した生活を営んでいた人が、その日常の合間に褥瘡を発症して、治療のために入院を余儀なくされるというケースもあります。
既に別の疾患で入院していた患者が褥瘡を引き起こす確率は、およそ10年前と比べても全体の半分程度にまで減少したといわれています。しかし、自立して生活している障害者や、在宅看護を受けている寝たきりの患者にとっては、完全看護の病院で経過観察をするよりも、日常的に褥瘡を起こすリスクが高くなることは容易に想像できます。
○褥瘡を専門に治療する専門医と病院管理を頼る
平成18年に、褥瘡の治療にたいする診療報酬制度が一部改正になりました。厚生労働大臣が定める基準を満たす医療機関に対して、褥瘡患者管理加算および褥瘡ハイリスク患者ケア加算が位置づけられました。
●病院での診療報酬算定は 費用はいくらに?
褥瘡にまつわる管理・処置等の報酬算定には、専門的な知識を習得した看護師等が、褥瘡管理者として配置されている医療機関で、チームと連携して患者ごとにリスクマネジメントを行う、などの条件があります。
褥瘡患者管理加算は1入院で20点(200円)を一回、褥瘡ハイリスク患者ケア加算は、一入院で500点(5000円)を一回、所定点数に加算することができるようになりました。
このほかに、重度褥瘡処置加算もあり、創傷部分の広さによって90点~500点が加算されることになっています。
処置にかかる費用は、褥瘡の管理体制を整えていると認められた医療機関で加算されます。このほか、外用薬やドレッシング材などは、実際に処方されたものをそのまま使用することになるでしょうが、ここにも薬価算定が加わります。
褥瘡治療は長くなりがちなので、専門的スキルと医療機器や設備の充実具合が、予後に大きくかかわってくるでしょう。