褥瘡が起こる直接的な原因は、局所の加重圧迫による皮膚の血流不足ですが、このほかにもさまざまな外的要因がいくつか重なることで褥瘡を引き起こします。寝たきりの状態や、同じ姿勢を取り続けると圧迫の他に皮膚の湿潤や乾燥、皮膚の擦れやずれ力が起こります。一つひとつの原因を探り、姿勢をこまめに変えながら圧迫を防ぐようにすることが、床ずれ(褥瘡)を回避する最も有効な方法です。
○皮膚疾患を起こさない環境づくり
寝たきりの高齢者や患者は、常にベッドやマットの上で姿勢を横たえた状態です。そして、布団とシーツに覆われた状態で過ごします。乾燥が褥瘡の原因となるというのは一般的によく知られていますが、逆に皮膚の湿度や衛生環境についても考える必要があります。
皮膚疾患の原因その1 湿度
肌が常に湿った状態では、皮膚がふやけてしまいカビなどの細菌繁殖の原因となります。またふやけた皮膚状態が続くと、一度炎症を起こした箇所から感染症が広まり、赤みを帯びてかゆみを伴います。かゆみや痛みが生じると、どうしても患部を掻き壊してしまい、また体の一部の自由が効かない身体状態では、かゆみのある場所を強く圧迫して刺激を与えてかゆみを解消しようとします。この時にパジャマや布団とこすれて摩擦やずれ力が働き、床ずれになりやすくなってしまいます。
皮膚疾患の原因その2 衛生面と刺激
自立歩行が難しい高齢者は、介護の場面でオムツを使用することがあります。最近のオムツは湿気を逃がしながら肌と排泄物の接触をしないための精度が高まり、また体に合ったオムツを着用できるようになりました。とはいえ、長らく排泄物が皮膚の周辺にあるのは衛生上よくありません。排泄物が刺激になって、またオムツ内の湿度が高まることで赤みや湿疹等の皮膚疾患を引き起こします。赤ちゃんのおしりかぶれ等が似た例です。また、入浴が思うように出来ない場合や洗浄不足など、清潔な皮膚状態を保てないことが原因となって、脂ろう性皮膚炎を起こすことが考えられます。夏の暑い季節は汗をかきやすく、皮膚衛生ケアに遅れが生じやすくなるので注意が必要です。
皮膚疾患の原因その3 アレルギー
治療中の患者さんが投薬を受けた時に、特定の薬に対してアレルギー反応があった場合は、発疹や湿疹が体に広がり、炎症を起こすことがあります。一時刺激性の皮膚疾患と同じく、特に内服の時は、薬が血流に乗って全身に運ばれると、順次アレルギー皮膚炎の患部も広がっていきます。そのため、一か所ではなく全身いたるところにアレルギー反応が出て、皮膚疾患の原因特定も遅れることがあります。これに合わせて、光線による皮膚炎症や寒さから起こる手足の赤ぎれ等を一緒に発症すると、別の皮膚疾患の疑いも出てきます。よって、アレルギーには注意を払っておく必要があります。