褥瘡治療の難しいところは、常に創傷部分を清潔に保ち、感染症から傷口を守りつつ、良好な肉芽細胞を育てることにあります。
皮膚層が欠損してしまった創傷部分は、汚染や感染細菌にさらされると、あっという間に悪化してしまい、褥瘡の根治は非常に時間が掛かります。
可能な限り創傷部分を密閉して、外的要因にさらさずに皮下組織を育てていくことが大切です。
○陰圧閉鎖療法で良好な細胞生成を促進する
傷口を開放したままにしていると、乾燥が進み皮下組織がうまく育たないばかりでなく、創傷部分が欠損したまま表皮化してしまうことも考えられます。
そこで、創傷部分を陰圧して過剰な滲出液をコントロールしながら、状態の良い肉芽細胞を育てる目的で登場した治療法が「VAC療法」です。
●創傷部分を覆う方法に注目
日本では「局所陰圧閉鎖療法」と呼ばれているVAC療法では、閉鎖性のドレッシング材で患部を多い、創傷面を陰圧します。陰圧すると、創傷面の血流が良くなるため、肉芽細胞が育つスピードが上がり、褥瘡治療を早めることにつながります。
●VAC療法は保険適用治療
日本国内では、保険適用を受けながら褥瘡治療に直接的な効果が大いに期待できる手段の中のひとつですが、適用を受けるには「維持管理装置を用いて上限4週間」という期限が定められています。
しかも、この装置の交換は2~3日おきで充分対応できるので、処置にかける時間と手間を大幅に軽減することができます。処置時の感染リスクも減少させることができ、なおかつ傷が治癒に向かう速さが特徴ですので、これから褥瘡だけではなく、やけどや手術痕などにも応用させて、広義の創傷に用いられる可能性が高まります。
○VAC療法が適している褥瘡の状態は
万人あらゆる褥瘡患者に、このVAC療法が使えるわけではありません。まず、感染した創傷には不向きです。良好な肉芽細胞の促進が主な目的なので、創傷部分に感染や壊死が見られるときは、前処置としてデブリードマンを行い、創の状態を清潔にしておかねばなりません。
●陰圧閉鎖療法を始めるタイミング
創傷部分に壊死があれば、滲出液コントロールによって侵軟させて除去する効果もあります。しかし、滲出液が多くドレッシング材がふやけると、滲出液を排出して減圧するためのチューブに詰まってしまうリスクがあります。
仮にチューブが詰まると創傷部分を陰圧して滲出液を排出させる機能が働きません。滲出液が排出できなければ、創傷部を完全に覆いかぶせてしまったドレッシング材のしたで、逆に感染スピードを速めてしまうことになります。
保険適用使用期限が決まっているので、効果を最大限に引き出すためには、創傷部分をまず洗浄(必要に応じてデブリードマン処置)を行い、肉芽形成が確認できてからスタートさせましょう。