デブリードマンが必要な壊死組織と創傷治癒の実現

創面に壊死組織がある場合、炎症や感染によって創傷部分が汚染されてしまいます。創面が「汚い」段階では、褥瘡を治癒に好転させるのはむずかしく、「きれいな創」にするためのケアが必要です。
創傷部分の治癒を活性させるための指標となる「TIME」(褥瘡治癒を阻害する因子となるもの)に沿って、現状を正しく理解し、必要な処置を施すようにしましょう。

〇TIMEとは

褥瘡の創面が汚くみえる4つの原因を確認するためのチェック因子を表すのが「TIME」です。4つそれぞれの因子を英語表記した際の頭文字をとった略称で、医療や介護現場でも使われています。

創床管理や創面環境調整に欠かせない項目なので、治癒促進のためのステップとして活用しましょう。

〇褥瘡治癒阻害因子TIMEの項目

T:活性のない組織(壊死組織・異物)が創傷に残存していないか
もし、壊死組織が創傷部に残っていると、周辺の肉芽細胞にまで感染や炎症が広がってしまうため、治癒を遠ざけます。もし残存していれば外科的デブリードマンや化学的デブリードマンを実施します。

I:感染または炎症
局所炎症や感染がないかをチェックします。感染が広がると、ポケットや真皮以下の筋・脂肪層にまで炎症や壊死が進行します。とにかく感染巣を抗菌薬で抑え、抗炎症薬を使用して炎症の沈静を図ります。

M:湿潤のアンバランス(滲出液量)
良質な肉芽・皮膚細胞形成に、湿潤環境が欠かせません。乾燥した創面は細胞形成が進まず、上皮化を阻害します。適度な湿潤環境を維持するために、ドレッシング材や保湿を保つ基材を含む外用薬を塗布して、湿潤状態を維持します。

E:創縁が進まない・皮下ポケットがある
一見して、創傷部分がきれいな状態を保っていても、皮下ポケットを深部に形成していると、ポケット内部で感染や炎症が広がってしまい、治癒が活性しない事があります。

表面的なケアに留まらず、皮下ポケットの洗浄やドレナージを行い、またデブリードマンを実施して辺縁の治癒を促す必要があります。

〇デブリードマンの必要性と湿潤

壊死組織があるかぎり、褥瘡の完全な治癒を目指すのは難しいでしょう。局所感染を確認したら、それを可能な限り早く取りのぞくことが大切です。

しかし、壊死細胞周辺の炎症反応が強い場合は、無理にデブリードマンを行うと更に感染リスクを高めてしまいます。炎症の沈静を待ってからデブリードマンを行うのが得策です。   感染や壊死組織を除去したら、再び感染をしないように注意し、滲出液量の調整と創縁管理を続けて、上皮化(治癒)を目指しましょう。