高齢社会といわれる現在の日本。年齢人口バランスが今後更に、高齢者割合増加をたどるのは明らかです。そこで、年齢だけで老化を図らない「健康寿命」を延ばす取り組みが盛んになってきました。寝たきりを防ぎ、全身管理を含めた在宅ケアを中心とした、長期スパンの生活を確立させることが、快適で健康的な人間らしい生活を送るために必要だという考えにシフトしつつあります。
そこで、床ずれに対する在宅と入院のケア方法と、必要な観察期間(サイクル)について、比較してみます。
〇入院では「床ずれ治療」は別扱いされる?
疾病・疾患の治療が目的で入院し、治療期間中に床ずれを発症するケースは珍しくありません。患者の立場なら、完全に健康な体を取り戻してから退院したい思いがあるでしょうが、病院側は、入院の原因である病気の完治を一つの区切りとして、入院期間の目安を試算します。
●入院期間を短縮する方向性
患者が入院して病気の治療をしている間に、床ずれが起こったとします。入院して治療を行う目的だった疾患の手術や処置を行って治癒の見通しが立つ期間と比べ、床ずれの治療や観察に必要な時間のほうが長くなるのが一般的です。
命に関わるような疾患(例えばガンや脳卒中、心筋梗塞などの生活習慣病)の治療に必要な入院期間は、医療の発達とともに短縮しています。十分な入院ケアを望んでも、治療に時間と介助の手が多くかかる床ずれを理由にして、期間を延ばすのは難しいというのが今の医療現場の実情です。
〇在宅と入院の床ずれ治療に対する「違い」
床ずれ治療の最終的な目標は「治す」ことです。しかし、同じ目標でも、入院して治療を行う場合と、在宅でケアをする場合の「目指す」ポイントが異なることがあります。
入院を必要とする床ずれの治療は、快方に向かい始めた時点で一様の成果を評価します。完全に傷が治癒するまで治療を行うのではなく、床ずれの悪化を止めて好転させるのが、当面の目標です。
しかし、在宅で床ずれをケアする際は、予防や緩和、経過観察が目標となります。床ずれの完治をさせるための処置ではなく、介助ケアと在宅医療などを併用し、緩やかに快方に向かわせる、または大きな改善がなくても治療を継続する、という取り組みを担います。
入院治療と在宅ケアは、予防や治療に対する意識や役割、目標が異なります。病院にいれば医師にいつでも診察してもらえるという安心感が得られるので、入院して床ずれ治療を行うのがベストだと思われがちです。しかし、仮に入院期間を十分に取ったとしても、その大半は観察と体位変換などの処置を行う時間です。
床ずれが改善しない時は医師に看てもらい、その他の時間は住み慣れた自宅や療養施設でホームケアを実施するといったような、在宅と入院治療がそれぞれの目標に沿った治療を併用する方法が、これからは増えていくでしょう。