褥瘡治療に欠かせない栄養 亜鉛の補給とたんぱく摂取

褥瘡を治すためには、褥瘡を悪化させない環境づくりが必要です。しかし単に、褥瘡の直接的な原因となる「除圧」と「ポジショニング」に注意しておけばいいという訳ではありません。
原因を取り除くことに加え、創傷を治すために必要な栄養をきちんと摂取し、清潔を保ちながら必要に応じて薬を変更していくことが、完全な治癒を目指すための条件となります。


〇褥瘡の発生と予防に必要な栄養
褥瘡がある患者さんが、その傷を治すために必要な栄養は、人が通常の生活を送る人よりも多くなります。褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)によると、基礎エネルギー消費量の1.5倍以上の補給をすることが望ましいと記されています。
必要エネルギー量の算出には、総エネルギー量と、活動・ストレス係数を用いるものと、現体重や浮腫、腹水などを加味した理想体重に20~30キロカロリー(予防の場合。治療の場合は30~35キロカロリー)を乗じて算出する簡易式の方法もあります。

 
〇体重の増減管理と褥瘡に必要な栄養
体重の増減は、患者のカロリー摂取が適切かどうかの指標となります。
褥瘡の予防を考慮すると、エネルギーを多めに投与して治癒を促すのが良いとされます。しかし、体重評価をしないまま、エネルギーを多めに投与し続けてはなりません。
毎日を過ごす姿勢や病態によって異なりますが、寝たきりで胃ろう管理をしている場合は、エネルギー過多になることもあります。

 
〇褥瘡を治すために亜鉛の摂取を
組織の再生を促すために必要な栄養分として、たんぱく質の摂取を積極的に行うのが良いということは、広く知られています。細胞組織や筋肉を形成するために、肉や魚、大豆などを多く摂取する食事が推奨されますが、褥瘡の治療と予防を念頭に置く場合、たんぱく質に加えて、亜鉛やアルギニン、ビタミンCの補給が重要です。
なかでも、亜鉛が欠乏している人ほど褥瘡を起こしやすいという報告もあり、特に寝たきり度が高いほど、血清亜鉛値が低いという研究結果があります。

 
●食事量の減少で亜鉛欠乏も深刻に
加齢によって食事量が減少すると、十分な栄養を食事で補うことが難しくなります。また、消化管の吸収機能が低下して、亜鉛が欠乏しやすくなるため、積極的に亜鉛を補給する取り組みをすることが大切です。
亜鉛は過剰症が起こりにくいということを鑑み、一日に30ミリグラムを目安に補給することが望ましいでしょう。健常な人は一日に10ミリグラム程度の亜鉛摂取が理想とされています。
ただ、亜鉛は必要十分な量を食事のみで摂取するのは難しいので、サプリメントを使用して不足しがちな成分を取り入れる様にしましょう。