褥瘡の傷が修復していく過程 黒色期から白色期へ

褥瘡の創傷部分が黒色になるのは、皮膚の組織が壊死していることの表れ。
硬く固まった壊死組織は、組織細胞を自ら修復して生成することができません。
表層を覆うように黒色化した壊死細胞が覆っているその下では、残存している組織の修復を進めようとしています。
しかし、壊死した細胞の周りでは、赤くはれたような炎症反応が起こり、滲出液も多くなります。
俗にいう「汚い創」の状態です。一見して、創傷表面を覆い、褥瘡が落ち着いているようにも見えますが、壊死細胞の下では良好な肉芽細胞が育たず、更に炎症反応が強まって壊死細胞の浸食が進みます。
この褥瘡黒色期を脱し、良好な細胞を育ててながら傷部を修復されなければなりません。


〇褥瘡の黒色期にみられる傷の変化
黒色期の褥瘡は、壊死した表皮細胞の下で真皮や筋肉など深い部分に壊死や炎症、感染を広めて行きます。
黒色化した壊死細胞の周りが腫れ、赤く境界が現れて熱を帯びてきます。
損傷部分に脈を打つような疼痛が現れることもあります。
創が深くなると、治癒までに時間がかかり、局所の感染が災いして全身に感染症状を起こす危険もあります。
汚い創といわれる黒色期を確認したら、まずは壊死した細胞を取り除いて、不良肉芽の生成を抑えるための処置を行います。
細胞の融解によっておこる臭いも、黒色期に現れる「汚い創」の特徴です。

 
〇黒色期の処置後 黄色期から赤色期
壊死細胞を除去すると、創傷部分を覆うように滲出液が増えてきます。
滲出液は新たな組織を形成するために必要なものなので、吸湿しすぎないように注意しましょう。
湿潤状態を保っていると、黒色期の壊死下にあった不良肉芽が見えてくるでしょう。
また、溜まっていた膿が表面に現れます。不良肉芽があらわになった状態を黄色期と言います。その後、鮮やかな赤色をした肉芽が増生されてきます。
また、創の淵から表皮の上皮化が始まります。
良好な赤い肉芽が育ってきたら、感染や炎症をおこさないように丁寧に洗浄と薬の塗布を行いましょう。
外用薬は、その創の状態を見ながら、滲出液コントロールができるように調合して用います。

 
〇褥瘡の治癒までもう一息 白色期
順調に鮮やかな肉芽細胞が育っていく赤色期を過ぎると、それまで欠損していた上皮細胞が新たに形成されます。
新生上皮の組織形成が始まると、肉芽は収縮をはじめて上皮の下に収まろうとします。皮膚表面を上皮が覆い始めた状態が白色期です。次第に上皮が創をふさいで、褥瘡は完治します。
黒色期の汚い褥瘡は、放っておいて自力で傷を修復することができません。また、褥瘡は生活習慣や癖といったような、日常のわずかな動き(ずれ)によって起こる事もしばしばあります。
一度褥瘡を完治した箇所に再び傷を作らないためにも、予防観察を適時行うことが大切です。