自分の意思で体を自由に動かせない「寝たきり」の人は、着替えをするのも一苦労です。
健常者なら当たり前にできる「動き」をとれない人にとって、またその介助をする人にとっても、着替えるという行為には時間が掛かり、体力を消耗します。
ゆったりと着替えをすることができる時間をとり、決して無理な体勢をとらないことが大切です。
そして、介護シーンの中で着替えるタイミングを上手くとると、寝たきりで過ごす人の気分を切り替えるスイッチとなりメリハリを与えます。
介助をする人もされる人も、双方が少しでも楽に着替えと向き合える様にしましょう。
〇着脱しやすいデザインの着替えを準備
在宅看護への取り組みが盛んになってきていることもあり、介護用品や福祉用具の調達が楽に行えるようになりました。
専門店でしか購入することができなかったものが、今では量販店でも取り扱われています。
●寝たきりでも着替えやすい 衣類の選び方
ずっと安静な姿勢を保つ要介護者にとって、圧迫感やしめつけ感がある衣類はストレスを感じさせます。
窮屈に感じないためにも、体形よりも少し大きめで、ゆとりがあるものを選びましょう。
丸首の上着は、着脱に不向きです。
羽織ってボタンで留める前開きの上着を揃えましょう。
肌着も、頭からすっぽりと被るのではなく、前合わせで紐止めするタイプのものがおすすめです。
ズボンは総ゴムタイプの物を選び、ボタンがないものを選びます。
寝たきりの人は、仰臥位で過ごす時間が長くなります。
前合わせボタンの上着はさほど問題ではありませんが、ズボンの飾りボタンがある場所は、ほんの小さなものでも身体を圧迫し、褥瘡を起こすリスクを高めます。
●寝たきりの人が感じる痛みや可動域に合わせて
着替えを介助する人は、スムーズに進まない時こそ、どうにか服を着せようという気持ちが湧いてきます。
しかし、寝たきりの人は、関節が拘縮していたり、姿勢によって痛みを感じることがあります。
着替えのたびに、痛みや無理な姿勢をとらねばならないという気持ちが湧くと、介助をする人もされる人も、着替えが苦痛になってきます。
清潔を保ち、気分を切り替えて生活リズムを維持するためにも、スムーズに着替えられる衣類を選ぶようにしましょう。
〇寝たきりの人がスムーズに着替える手順は
病棟看護師や介護職の人は、多くの介助人をスムーズに着脱することができますね。
流れるような手順を見て感心する人もいるでしょう。
介助が必要な人の着替えは、「脱腱着患」を基本にして行います。看護師や介護職につく人は、この知識をもとに着替えを行っているからスムーズに行えるのです。
●脱腱着患の着替えで寝たきりの介助を楽にする
介助が必要な寝たきりの人は、動かしにくい(動かない・痛みがある)側と、障害や痛みがない側があります。(全身に神経や感覚の障害がある人は、適時その人に合わせた方法を看護計画の中に立案するケースもあります。)
動かしにくい側を患側、動かせる(動かしやすい)側を腱側といいます。腱側から脱がせて、患側から着せるというのがこの「脱腱着患」の手順です。
脱がせるときは、痛みや可動に問題がないほうからスタートし、患部をいたわりながら脱がせる。また着せるときはゆっくりと負担をかけずに患側から着せて、健側の袖を通すというのが、要介護者に負担が少ない方法です。
過剰に体位を変換したり何度も体を動かさなくても、この「脱腱着患」を意識して着替えをすれば、負担も時間も短縮することができるでしょう。