褥瘡の発生と内的な要因 リスクを回避するための管理を

寝たきりの患者や、高齢者介護の現場では、病状や身体状態の観察とあわせて褥瘡が発生していないかのチェックを行うこととなります。同じ姿勢のままで一定時間をすごすと、ベッドと密着して圧迫される体の一部に褥瘡をおこしやすくなります。
褥瘡発生の原因として知られる「圧迫やずれ力」は、外的な刺激や力によってもたらされるものです。
このような外的因子は、除圧や体位変換を行うことでリスク管理が可能になります。
しかし、褥瘡の発生原因は外的なものの他に、内的な要因もあることを念頭に置いてケアやリスク管理を行うことが大切です。


〇褥瘡の内的な要因とは
身体の機能低下や、褥瘡を起こしやすい状態をそなえた身体状態のことを内的因子といいます。
患者の身体状態は人それぞれ違いますし、日々変化しています。
褥瘡を起こさない状態を維持、好転させるための処置を繰り返し行うことで、発生リスクを抑えると同時に、介助をする人の負担減少にもつながります。

 
●内的要因その1 加齢
人間は、年をとると体の機能が徐々に低下し始めます。
特に、高齢者の老化スピードには注意が必要です。
内臓機能や反射神経、筋力の低下が起こり始めると、疾患治療の予後が良くない・転倒しやすい・動きが緩慢になり筋肉が落ちるなどといった変化が顕著に現れます。
自立した生活を送っていた人も、疾患治療のための手術や足腰の負傷をきっかけに寝たきりになってしまう可能性が高く、離床が難しくなるケースも珍しくありません。

 
●内的要因その2 神経系の麻痺症状
不慮の事故などによって負傷した場合、損傷した部分の神経系麻痺を起こすことがあります。
神経は一度断絶すると元通りに完治させることが非常に難しく、また脊髄(に近い部分も含めて)が損傷した場合は、半身・全身麻痺が現れることもあります。
麻痺が生じた部位には感覚障害が残ります。
慢性的な痺れや違和感、または感覚がない状態で長らく生活していると、麻痺を起こした部分に褥瘡が発生しても、本人が気づかずに深い創になってしまうリスクがあります。

 
●低栄養状態
寝たきりで過ごす患者や高齢者は、体を動かせない時間が長くなるにつれて、いろんなものに対する意欲が低下する傾向があります。
安静が長くなると空腹感が遠のき、食事の量も減りがちです。
十分な栄養をバランスよく摂取したいのに、食べることに対しての意欲低下や、(高齢者の)噛む力や嚥下障害によって、十分な食事を取る事ができなくなります。
結果として低栄養状態に陥るリスクが上昇するため、創傷部分の修復に必要なたんぱく質や水分が不足し、創の治療が慢性化しやすくなります。