褥瘡を予防治療していく上で重要視されがちなのは、姿勢や処置などの対処療法です。もちろん、日々の処置と観察を続ける中で、薬を用いたり創の状態を確認して看護を必要としたりする場面が多くなります。
しかし、体の根本的な耐性を整えるという見方からすると、栄養管理を行うことの重要性は否めません。
○褥瘡の治療と栄養状態の把握
患者の体に発生している褥瘡の数、または大きさ・深さに関わらず、創傷部分の処置と体位変換は、なにより直接的な褥瘡予防と症状の軽減に繋がる大切な行為です。それを踏まえた上で、身体状態をより良くすること。これが褥瘡予防の効果を更に高めることになります。
●褥瘡の傷ケアだけでは不十分
看護や介助を担う人にとっては、その創傷が一日でも早く小さくなり、完治に向かうのが目標でしょう。ただ、日々その傷を抱えて時間をすごす患者にとって創は単なる傷ではなく、そこに痛みや疼き、違和感を抱かせる元となるものです。
体にひとつでも創があり、また体が自由に動かせない状況であれば、それだけで十分な負担(ストレス)となります。
痛みやストレスから食欲が低下し、十分に栄養を取ることが出来なくなれば、健全な皮膚状態や血行、細胞を再生するための成分維持が難しくなります。
傷の状態を見て、新たな褥瘡発生を予防するだけでなく、患者の痛みや違和感にも配慮し、すこしでも楽に時間を過ごせる様に環境を整えることで、傷だけでなく患者自身の気持ちも好転していくでしょう。
○栄養の状態を管理するためのポイント
特に高齢者の場合は、褥瘡の有無に限らず、定期的に栄養摂取ができているか状態の把握をしておくことが大切です。
栄養がバランスよく十分に摂取できていれば、精神的にも安定しやすく、褥瘡の創傷修復も早まるでしょう。血流が良くなれば投薬・塗布材の効果も高まります。
●栄養スクリーニングで状態を把握
食事量の減少がないか、栄養バランスに偏りがないか(嗜好品の頻度)、体重が減少していないかなど、摂取した食事の内容から栄養状態と身体状態を把握しましょう。
●褥瘡と栄養アセスメント
褥瘡の処置と同時に行う身体計測や、血清アルブミンの値、浮腫みの有無(尿回数の確認)などから身体状態を確認し、栄養障害の程度を客観的に判断評価します。
●栄養補給方法の検討とモニタリング
不足しがちな栄養素は、副菜指導や補助食品の活用などで補います。また身体的な問題で栄養が十分に取れない状態(嚥下トラブル、摂食障害、口腔トラブル)があれば、それぞれ必要に応じてケアを行いましょう。改善策を実践し、その後定期にモニタリングをして状態が好転しているかどうか検証をします。
褥瘡治療は、単に創の処置を行って足りるものではありません。
必要な経過観察や処置を行い、並行して体の中から健康を維持する機能を保つための包括的なケアを行っていきましょう。