敗血症と多臓器に関係する病気の発症 脳梗塞の場合

褥瘡のような体の一部に起こっている炎症が、全身症状を引き起こすきっかけになると現実的に想像することができるのは、褥瘡を発症したことがある人や、その治療・介助に携わったことがあるというような、ほんの一部の関係者でしょう。
まさか、こんな傷がもとで重篤な全身の症状や、臓器に悪影響を及ぼすことになるなんて…。症状がどんどん悪化する過程で、それぞれの症状を別々に向き合うのではなく、それぞれの症状が関連している前提で治療を考えることが、時に必要です。


〇敗血症がおこる原因と全身症状
敗血症が起こるすべての原因は「感染症」です。その感染源の如何に関わらず、体の一部に起こった感染症状の元(感染菌)が血液を汚染します。感染原因となる菌を、血流にのせて全身をめぐることで、血液が出入りした臓器に次々と悪影響を及ぼします。
血液内に感染菌が入り、その血液が全身を巡れば、その血液はあらゆる内臓機能に影響すると言っていいでしょう。

 
●敗血症定義に変化も 症状のとらえ方
2016年に、それまでの定義ととらえ方を異とした、新たな敗血症定義が発表されました。(国際コンセンサス定義第3版)。それまでは、前述したような全身の炎症反応による臓器障害に対して敗血症と定義されていました。しかし、炎症が起これば、体内ではそれを治そうとする抗炎症反応も起こります。
全身症状が起こる状態だけでなく、感染に対しておこる全体的な制御反応を含めて、体の調節機能がうまく行かなくなった状態のことを「敗血症」とする定義があらたに提唱されたのです。

 
〇敗血症による脳梗塞発症リスク
炎症反応が全身に現れる敗血症の場合、体内の毒素や老廃物排出を促すための臓器、特に肝臓や腎臓など多臓器不全が起こりやすいという特徴が知られています。
しかし、炎症反応が起こることで、サイトカインの濃度が増し、その情報が中枢神経に伝達されることで全身の血流コントロールが乱れ、虚血状態を引き起こすことがあると言われます。
虚血状態でダメージを受ける体の部分、それが脳(頭部)です。脳が虚血状態になり、脳機能だけではなく微小腫瘍や出血など深刻な状態を引き起こします。
感染症は、その感染源を特定し、早急にかつ的確に抗菌薬を用いて治療を開始せねばなりません。全身の炎症を引き起こすだけでなく、またその感染によっておこる体内の変化によって二次的病状を招くことになります。
敗血症を発症した患者は、敗血症性関連脳症をおこす事例も多く、せん妄や昏睡状態となるケースがあります。全身症状と合わせて、意識障害がみられた場合は、脳梗塞や関連脳症に注意しましょう。