褥瘡が進むと高まるリスク 感染について

体の一部にけがを負ったとき、創傷部分が化膿して治りが悪かった、腫れや疼痛が起こって治癒するまでに時間が掛かったという経験があるでしょう。
傷口に感染症状が起こった場合に、傷が修復するための処置では足りず、何らか別の薬を用いて経過を見ることがあります。
この「感染症状」とはどのような状態のことをいうのか。感染という定義と起こる状況についてのお話です。


〇褥瘡の創面におこる感染とは
床ずれのように、皮膚に近い部分から起こるもののほかにも、外傷性の傷や、内臓疾患、手術後の環境など、生活のいたるところに感染リスクは潜んでいます。

 
〇感染の定義
感染とは、”生体の中で微生物が定着して増殖する状態”(引用:「はじめての褥瘡ケア見る看るわかるポイント50」 切手俊弘著 2013年照林社出版)を指します。
微生物が患部に定着し、患部元の機能を損なわせるような活動を始めている状態が感染症です。

 
●感染症のポイント
褥瘡の治療中に感染症を起こしやすいと言われますが、その対策として「患部を清潔に保つこと」「創傷の治療効果がある薬を使用すること」があげられます。
治療する環境には、常在菌をはじめいろんな微生物や細菌があります。日常生活の中でこれらを根絶してしまうのは難しいでしょう。しかし、菌や微生物が患部に存在しているだけで「感染している」とは言えません。
感染症というには、患部にある微生物や細菌の数や毒性、そして常在する患部(主)の抵抗性が関わります。数が増えて、そのために患部が攻撃されて身体部分の抵抗力が弱まった状態こそが「感染状態」です。

 
〇感染症を起こしやすい褥瘡の状況
皮膚組織が欠損して、組織があらわになる褥瘡は、外的刺激や細菌の作用を受けやすくなります。
しかし、仮に微生物や細菌が褥瘡の創面に付着しても、ごく少数では抵抗力を失わせるほどの毒性を持たないと言われています。

 
●感染症化させないための褥瘡処置を
通常の創傷であれば、傷口周辺を清潔にして、消毒や抗菌薬を用いることで一定の効果が表れます。褥瘡が他のケガ(外傷性の傷)と異なる点は、壊死した細胞やうっ血の塊、膿が創面やポケットに残りやすいという事です。
傷の周辺に身体細胞以外の異物がのこっていると、たとえ細菌の数は少なくても感染を起こすリスクが高まるといわれます。壊死細胞をデブリードマンで取り去る処置を行うのは、肉芽細胞を健全に育てるためであり、感染症を防ぐ目的も備えているのです。
褥瘡の創面を常に清潔にすることで細胞を育て、感染症を防ぐ効果が上がります。細菌や微生物が付着しにくい環境をつくるために、洗浄や薬の塗布を定期的に行って、傷と傷周辺の状況を慎重に観察することが大切です。