褥瘡治療にかかせない湿潤環境とは

褥瘡を発症した患者は、その傷を治療するために患部をある程度湿らせた状態にしておく必要があります。
これを「湿潤環境」といいますが、どうして湿らせた環境をあえてつくらなければならないのか、それによってどんな効果が期待できるのか。意味と役割を知っておくことで、適切な処置に役立てられるかもしれません。
褥瘡の傷が治りやすくなる適切な湿潤状態について知っておきましょう。


○どうして褥瘡に湿潤環境が適しているか
上皮(真皮)組織が損傷すると、滲出液が傷口を覆います。傷の深さや大きさ、感染や炎症の程度によってこの滲出液量は変わります。

 
●褥瘡の治癒を早める効果
創部が湿った状態であれば、組織形成に欠かせない細胞を生きたまま保持することができる、というのが最大のメリットです。乾燥した箇所では細胞が枯渇して死んでしまいます。
特に、上皮因子や治癒因子細胞は湿った環境を好みます。そして線維芽細胞という皮膚形成細胞や、内皮細胞の成長を助けることが、これまでの臨床結果でわかっています。

 
●壊死細胞を自力で融解
乾燥・感染して硬くなり黒色化した壊死細胞は、自浄作用で取り除くことは難しいでしょう。黒色化した壊死細胞は、更に褥瘡の傷に感染を広め、細胞を壊死させてしまいます。
壊死組織はきれいに取り除くのがベストです。湿潤環境の中では、壊死細胞が乾燥するのを防ぎ、自己溶解で壊死した部分を浮き上がらせる効果もあります。
外科的デブリードマンなどを実施せずに、融解の促進と傷口の洗浄をする役割としても湿潤環境は整えておくべきでしょう。

 
●褥瘡の痛みを湿潤で和らげる
乾燥して刺激が加わると、傷の表面だけではなく、深部にも鈍痛・疼痛が起こって、中に響く感覚が起こるでしょう。皮膚の損傷は、ちょっとした擦り傷でも響くような痛みを伴います。
湿潤環境が保たれると、創面にあらわになった痛覚の刺激を少なくすることができます。過度の滲出液を吸収するドレッシング材を使用するときは、褥瘡の傷にドレッシング材が張りつかないように気をつけておかねばならないポイントです。
適度な湿潤のときは、ガーゼやドレッシング材に患者の患部(局所)が、張り付きにくく、交換時のストレスも起こりにくくなります。
同じ地域の人やヘルパー、支援員等と一緒に管理をしておくと、後にトラブルになりにくいです。
必要以上に潤いを外部から与える必要は、特にありません。過度な滲出液は、周辺の皮膚が浸軟してしまうため、効果を半減させてしまいます。定期的にドレッシング材を交換して、必要な検査を行いながら、必要十分に潤っている環境を整えていきたいですね。