表面的な処置を行って経過を観察する初期の褥瘡なら、外用薬やドレッシング材を用いて完治させることができますが、深部に達した褥瘡は、それだけではなかなか快方に向かわせることが難しいでしょう。
表面の創部が小さくても、深部に膿がたまっていたり、細胞壊死が進んだりしている場合は、外科的な処置が必要になります。
○褥瘡の外科再建術
褥瘡は原則的に保存的治療を行って、その創の具合を見ながら最適な治療方法を選ぶのが理想です。しかし、皮下組織よりも深い部分に褥瘡が進行していると、保存的治療では効果がみられない場合もあります。
●褥瘡の外科的処置
細胞の壊死が進んでいる、創の周りが瘢痕・陳旧化しているときには、創の一部または壊死部分を切開して膿や壊死細胞を取り除いてから、新たな細胞形成を目指す手術を行います(デブリードマン)。
不良細胞を取り除けば、その後良好な肉芽細胞が作られます。感染症に注意しながら、肉芽形成と上皮化を目指して、外用薬の塗布と洗浄を繰り返して褥瘡の治癒を目指します。
●外科的再建術(手術)の選択
保存的治療をおこなっても、経過が良くない場合があります。また上皮化が進まない・褥瘡が深部に達しているという条件があるときには、手術を行って褥瘡を完治させる方法を選ぶケースもあります。
再建術には、皮弁形成術と植皮術があります。
●皮弁形成術とはどんな手術?
皮弁とは、「血流のある皮膚・皮下組織や深部組織」を移植する手術方法です。(http://www.jsprs.or.jp/member/disease/procedure/procedure_03.html 一般社団法人日本形成外科学会ページより引用)
皮弁形成術とは、自分の体から細胞を採取して、被覆して欠損した軟部細胞を再建する手術で、褥瘡の治療を目的とした外科的な手術の中では、侵襲が大きいといえます。感染症コントロールがとても重要で、しっかりと感染を予防していないと、手術後に縫合部分が開いてしまう創離開がおこる可能性もあります。
しかし、正常組織で覆っているため、創傷治癒過程を見守りながらケアがしやすいというメリットは大きいでしょう。
●植皮術とはどんな手術?
褥瘡は、上皮部が欠損し、真皮があらわになってしまうため、傷そのものの状態を見ながら治癒までコントロールを行うのはとても難しく、上皮化が進まないという悩みをもつ患者も多いというのが実情です。
その点、この植皮手術を行って、患者の皮膚の一部を切離して褥瘡部分に移植すれば、植皮部分は2~5日ほどで生着します。この手術なら、病棟や在宅でも行うことができ、侵襲も皮弁形成術より低いです。
褥瘡は、その傷の大きさだけでは程度を正しく測ることができません。思いがけず深部に達していたということもあります。その際は、しっかりとデブリードマンを行い、早期に不要細胞を除去しながら、傷の程度によっては手術を行うことが重要です。