寝たきりの体位を変換するアイテム 枕の活用法

寝たきりですごしている患者は、長時間同じ姿勢を保持していると体圧によって褥瘡リスクを高めてしまいます。
完全看護の病院などでは、看護計画の中に「体位変換」を計画的に実行するように管理することができますが、在宅ケアを行っている場合は、スケジュールを確実に実行するのが難しくなります。
大きく体位を変えるのは、介護をする人にとっても相当の重労働です。そこで、褥瘡のケアを行う際には「ポジショニング」を活用しましょう。その時に必要となるマストアイテムが枕です。


○枕を使って褥瘡予防をする 
褥瘡予防のための体位変換と聞けば、大きく左右の身体方向を変える風なイメージをもたれる人もいるでしょう。実際に看護をする場合には、仰向け→うつぶせという体位変換を繰り返して、全体の加圧ポイントから除圧を行うような配慮を行うべきでしょう。
しかし除圧は、定期的に体位変換を行っても予防条件として完全とまでは行きません。そこで、簡易的・定期的に、最小限の負担で除圧を繰り返すための手段として、枕を使った「ポジショニング」の活用をお勧めします。

●ポジショニングとは
体位変換を行う際には、介助の摩擦や持ち上げる際の力加減などが、ずれ力となって創傷を起こす可能性がある点に注意が必要です。
そこで、無理に移動して患者の体を動かし、角度をつけるのではなく、枕の高さを利用して姿勢を変えるようにする方法をポジショニングと呼びます。

●ポジショニングの方法
患者が使用しているベッドのマットレスの下に、バスタオルなどをたたんで高さを持たせた小枕を挿入します。
フラットなマットレスに寝たきりの患者は、肩や仙骨部分、後頭部、かかと部の突出部分に体圧が点集中しやすくなります。
そこで、頭部・腰部・かかと部の左右で合計6箇所に、小枕を出し入れしながら体全体の傾きや角度を調整します。このポジショニングを「スモールチェンジ法」といいます。

●枕を使った体位変換のメリット
除圧は定期的(2時間おき)に行うのが望ましい、と日本褥瘡学会では定義していますが、実際にこの間隔で体位変換を行う負担は相当なものです。スムーズに行わねば患者自身もゆっくりと休むことができません。
特に、深夜の就寝時間帯に2時間おきの体位変換は、介護をする側にも受ける側にとっても体力的・精神的負担を強いることになります。
寝たきりの状態ですごしている患者が就寝中であっても、小枕の挿入程度の変化は気づきにくく、睡眠を妨げるリスクは減少し、ゆっくり休むことができます。
褥瘡は発症すると痛みが伴い、処置を頻繁に行わねば深部に達する、治癒までの時間が長くかかる症状です。そこで、予防は大前提として、なおかつ介護者が無理なく続けられるケア方法を優先させるのが望ましいでしょう。
褥瘡を予防するための体位変換を、小枕を使用して手軽にすることで、介護者は局部の圧迫を容易に軽減させることができます。