感染症によっておこる可能性がある敗血症という症状は、感染症状が全身で現れる(またはそのうたがいがある)状態ですが、同じ細菌に感染しても、敗血症を引き起こす人とそうでない人がいます。発症リスクには、既往歴、持病、年齢が関係するといわれています。
○年齢層ごとの敗血症発症リスク
人間の身体機能が十分になる成人男女は、感染時の諸症状に対して身体が耐えられるほどの体力と機能を備えている場合が多く、敗血症になっても治療効果が得られやすいと考えてよいでしょう。
反対に、深刻な重症度に陥る年齢層は高齢者と小児年齢層です。子供は自覚症状をうまく伝えることができず、身近にいる親や大人の判断によって病院受診のタイミングが左右されます。判断が遅くなり、発熱や頻脈などの症状が現れてその感染を疑うというケースも珍しくありません。
また、高齢者は自身の身体機能や免疫力が低下してきます。細菌感染したのちに、十分な免疫力を備えていない体内では、感染巣が増殖し、敗血症を起こすリスクが高まります。
○高齢者年齢層は敗血症割合が高い?
前述したとおり、高齢者年齢層では敗血症リスクが高まる傾向があります。その理由と原因を探っていくと、生活環境や加齢による要因が見えてきます。
●機能低下と老化
年齢を重ねると、体は老化していきます。そのスピードや度合いは人それぞれですが、それまでの生活習慣や環境によって身体機能レベルも異なります。手足を充分に動かせない、特定疾患で入院して以来寝たきりになってしまった、というように、体を充分に動かすための体力と機能が失われた状態になると食欲も低下し、十分な栄養を経口摂取することが難しくなります。慢性の栄養不足で免疫力が低下しても、それをカバーするほどの栄養を補うことができません。
加齢に伴って、生活の仕方も変化します。日常的におむつを着用している高齢者は、黄色ブドウ球菌や大腸菌などが感染素となるリスクが高まります。同様に、寝たきりで介護を受けている高齢者は、臀部の褥瘡に菌が付着、感染するという経路で敗血症に至ることも十分に考えられます。
●既往歴 内臓系疾患
敗血症の発症しやすいのは、これまでに肝硬変や腎不全などの疾患を抱えている、糖尿病や悪性腫瘍(がん)、免疫抑制剤を内服したことがある人です。加齢に伴って、生活習慣病によるこれらの病気を指摘されたり、または経過観察をしている人の割合は、当然に高くなります。
細菌は、免疫力の弱まった箇所や機能を攻撃して炎症反応を起こします。全身の免疫力が低下すれば、局所ではなく全体の炎症につながりやすく、治療も長期化してしまいます。
重篤な状態に陥らないためにも、日頃の生活の中でも「細菌の体内侵入を防ぐ」ことと「侵入した細菌に対抗できる抵抗力を持つ」ことを意識することが非常に大切です。