深部に及ぶ褥瘡治療 デブリードマンと植皮術

褥瘡ケアを日常的に行っていても、病気治療のために入院した患者や、脊髄損傷などにより麻痺や不随の身体障害がある人は、恒常的な局所圧迫によって床ずれ(褥瘡)発症リスクが高くなります。
一時的な圧迫によって発症した褥瘡は、継続的処置を繰り返していたとしても創傷部分の感染や細胞壊死により、傷が深部に進行してしまうことは珍しくありません。早期に保存的治療を行って早期に治癒するのが理想ですが、経過観察の中で深部に達した創部は外科的な再建術によって治癒を目指すことになります。


○外科的治療 デブリードマンの実施
創傷部分を体表から確認し、その褥瘡のレベルを図るのは非常に難しいことです。深達度によって褥瘡の分類をし、各ステージごとに適切な処置を行うことが求められますが、ステージの定義に当てはまるかどうかを目視で見極めるのは非常に困難です。
目安としては、褥瘡の肉芽細胞がきれいかどうか、肉芽細胞が感染や炎症を起こしておらず、赤みを帯びてつやつやとしているかどうかが判断材料となるでしょう。深部にまで達した褥瘡は、内部でポケットを形成し膿がたまりやすく、菌の感染が確認できるでしょう。一般的に深部に達している褥瘡は、創部分が茶または白濁し膿・壊死細胞の残存で黒色化していることが多く、切除や切開、デブリードマンの実施が必要になります。

 
○デブリードマンと外科的植皮術
保存的治療は、初期や真皮にとどまる皮膚傷害レベルの褥瘡に適しています。真皮を超えて皮下脂肪層や筋肉、腱にまで達している褥瘡は、外科的治療が有効でしょう。感染した創傷部分の細胞や壊死組織を切除し、肉芽細胞の成長を促すのがデブリードマンです。
褥瘡の治療を行う場合、まずは創傷部分の治癒が一番の目的となりますが、深部に達した褥瘡は、きちんと正常な組織を育て、表皮を欠損している部分に植皮術を施し、外科的な傷口再建を行うのが通例です。
外科的な再建術としては、植皮術と皮弁形成術があります。植皮術では、体の一部から皮膚を完全に切り離して創床に移植をします。移植した皮膚に血流が確認できれば、次第に皮膚細胞が定着し、数日後には生着するでしょう。再建術の中でも軽微な手術とされ、病棟内や在宅ケアの患者にも実施が可能です。また、保存的治療を行った場合と比べて、治癒部の耐久性が増すため、恒常的に圧迫を強いられる脊髄や仙骨部分には再発予防に有効とされています。

 
○植皮術の注意点
植皮部の縫合を行う際に、創部を新鮮化して縫合することが大切です。網状植皮や植皮片埋め込みなどの方法がありますが、植皮が生着するまでの間は、特にずれ力に対する配慮と局所の安静がポイントとなります。
体表皮が欠損してしまう深達度の高い褥瘡は、皮膚表面を正常な状態にするために、デブリードマンを行い創部分に植皮術を施します。創部を清潔に洗浄し、膿や壊死細胞を取り去ってから外科的処置を行うようにしましょう。