長期療養患者の看護計画とリハビリ導入

褥瘡は寝たきりの姿勢が長くなる患者や、座位で過ごす麻痺性疾患のある患者だけに起こるとは限りません。一定の姿勢をとり続けた時間の長短にかかわらず、患者の身体状態によっておこるリスクも違います。

しかし、同じ姿勢をとり続けることは、やはり褥瘡発症リスクを高めてしまうことにつながります。医療用寝具の開発も進み、こまめな体位変換を行うことは、医療現場でもすでに多く実践されています。
重要なのは、長期間安静を強いられた患者が、再び体を動かすことに対する意識がそがれ、身体機能にまで影響してしまう「廃用性症候群」になることを避けて、無理なくリハビリを開始することができるように、慎重な看護計画を立てることでしょう。

 
○廃用性症候群とは
全身の疾患ではない病気やけがで入院した患者が、一定期間寝たきりの安静状態を強いられる間に、心身の機能が低下して身体の異常を引き起こすことを「廃用性症候群」といいます。
加齢で、もとより身体機能の低下が起こり始めている高齢者に発症するリスクが高いので注意が必要です。寝たきりの状態が長くなることで、代謝がさらに落ち、食欲不振や体重減少などの消化器系不具合や、呼吸器系換気障害、褥瘡などの皮膚疾患を引き起こします。
同時に、感覚が鈍る・協調性が失われるなどの神経系や、情緒不安定・うつ状態のような精神的なダメージも起こりえます。
看護計画を立てる際に、これらの症状が認められた場合に備えたケア方法を導入することをあらかじめ想定しておく必要がありそうです。

 
●リハビリと廃用性症候群
重篤な病気や全身性疾患、開胸・開腹手術を行った患者などに起こる場合が多いといわれる廃用性症候群ですが、実際にこの診断を行う明確な基準は現在のところありません。医師が、筋力や機能の低下を確認して、ケアを行うべきと判断した際に診断されます。
廃用性症候群は、「長期的な休養が原因となって、心身の機能が著しく低下した場合にリハビリなしでは改善することが難しいという病状」と言えるでしょう。

 
○リハビリの目的
寝たきりによって起こった心身の機能低下を改善すれば、自然的に褥瘡の発症を抑えることにつながります。廃用性症候群のような、寝たきりを促進する状況を脱し、機能改善を促して残存機能を強化しながら、心理的な立ち直りも同時に図ることが、リハビリの大きな目的となります。

 
●看護計画とリハビリ
看護計画には、身体機能の向上と合わせて、生活の質(QOL)・日常生活動作(ADL)の向上やストレス緩和、社会交流参加レベルの向上、基礎機能向上をもとにアプローチを行います。
立案した看護計画に沿って患者のケアを行うことは大切ですが、患者が頑張りすぎて負担や刺激を感じるような実践は避けるべきです。負担が大きくなれば、体力や気力の消耗が激しく、回復には逆効果になることもあります。
健やかに無理なく、自分らしい生活と身体機能向上を目指したリハビリを看護計画に導入し、着実に実践することが大切でしょう。