しびれを感じる箇所と全身ケアで褥瘡を回避する

体の一定箇所を押さえつけた状態が長くなると、その部分にしびれを感じるという経験は、病気に限らず日常生活でもよくあることです。
たとえば、正座をしていたら足がしびれた、体の節々にテーピングを強く巻きすぎて、手先や足先が冷たくなりしびれていた…というようなシーンは、実は褥瘡がおこる仕組みと非常に似ているといえます。

 


○しびれの原因は局所の圧迫
全身の中で一部だけ、長い時間圧迫を加えていると、その圧迫箇所がジンジンとしびれてきます。就寝時に同じ体制のまま体を横たえていると、肩や首元にしびれを感じて寝返りを打つということがあるでしょう。
これは、体の一部が寝具に圧迫されて血流が阻害されることでしびれが起こり、そのしびれをとり除くために無意識で体が行っているのです。
身体機能が十分な状態であれば、少しのしびれや痛み、違和感を感じ取る感覚神経が働き、改善するために体位を変えることも可能です。
ただ、全身のどこかに、しびれや痛みを十分に感知することができない麻痺性神経系疾患を患った人などは、体で起こっている血流阻害やこすれ、ずれの痛みがわからずに過ごしてしまうことがあります。全身観察の時に創傷や褥瘡を発見するケースも珍しくありません。

 
○しびれを感じない患者の褥瘡ケア
麻痺がある患者は、神経疾患がある場所のしびれを感じ取ることが難しくなります。全身性麻痺の患者は特に、しびれはおろか痛みすら感じないうちに、体のどこかで褥瘡などの創傷が進行していることもあります。
患者本人が気づけない褥瘡は、やはり看護を行う看護師や、在宅ケアを担うワーカーが気づいて医師に相談し、処置を行うという流れになるでしょう。
普段通りの様子であっても、大丈夫だろうという気持ちでなく、「異変はおこっていないか」と注視しながら体の状態をチェックするように意識することが大事です。

 
●全身観察を念入りに 
発症してからの処置と患部の観察はもちろん大切です。褥瘡は、初期の処置が早ければ早いほど、予後経過もよくなります。適切に処置がなされず、発見が遅れた場合は完治までに時間もかかり、細胞壊死など重篤な状況に至ることもあります。
しびれや痛みを感じる感覚神経に疾患がある患者は、本人が違和感を訴えてきたときはかなり深刻な状況になっているといってもいいでしょう。
また、感覚神経に異常がなくても、長い入院生活のために遠慮や気遣いがあり、なかなか素直に痛みを訴えられないということもあるかも知れません。褥瘡が深部に至る前に発見して、早めの処置に取り掛かるためにも、圧迫箇所以外の全身観察を毎回行うように心がけましょう。