褥瘡の治療と外用薬の使用 ワセリンの塗布について

褥瘡のケアには、日々原因を取り除く努力と経過観察が最重要課題です。寝たきりやおなじ姿勢が続くことによって、特に腰回りや骨の突出する関節部分を、長時間押しつけて圧をかけないように工夫し、発症を防ぐことが何より大切です。しかし、床ずれが悪化し褥瘡を発症した場合は、その進行具合を見ながら外用薬や外科的手術を以って、治療を行う事になります。

○褥瘡の症状と進行具合

褥瘡には、様々な病態や病気があります。その時々に合わせた治療方法を適切に選択してケアしていくことが大切です。

●褥瘡の症状

褥瘡は段階を追って進行していきます。また、症状は急性期と慢性期によって違います。急性期は、褥瘡発生からおよそ1~2週間の頃の状態です。このころは、赤みを帯びる・紫の斑点が出てくる・水庖が見える・皮膚がささくれてびらんが起こるというような症状が現れます。この時点では、褥瘡が浅いか深いかという判別は難しいため、日々の経過観察と患部保護が重要です。急性期から症状が好転して治癒すれば、引き続き圧迫や関節部を随時保護して、褥瘡が発症しないように環境を整えながら経過観察を続けます。急性期から治癒せずに進行すると、慢性期と呼ばれる浅い褥瘡または深い褥瘡となります。

○慢性期褥瘡のケアに用いるワセリン

褥瘡治療では、慢性期の浅いものと深いものによって治療の方法が異なります。浅い部分の褥瘡では、表皮と真皮が損傷し、この部分は再生能力があるので、皮膚再生環境を整える薬を使用します。

●ワセリンとは

(白色)ワセリンは、1950年代から継続して使用されている油脂性製剤です。水を通しにくく、皮膚の保湿や湿潤、保護に役立つ外用薬として広く使用されています。ワセリンを塗布した箇所は、体表にふたをしている状態となるため皮膚からの蒸発が起こらず、傷口保湿(湿潤療法)や、皮膚のバリア機能としても有効に働くとされています。

●プロペトとワセリンの違い

褥瘡ケアには非常に有効とされ、皮膚の保護と保湿のために使われている白色ワセリンは、医療現場でプロペトという呼称で使われることがあります。石油を原料としているワセリンのなかでも、不純物が少ないものを黄色ワセリン、黄色ワセリンよりさらに不純物が少ない薬を白色ワセリンと言います。プロペトは白色ワセリンを成分としていますが、他の白色よりも不純物が少ないのが特徴です。

●浅い・深い褥瘡に有効なワセリン

浅い褥瘡では、皮膚のバリアと保湿を助け、皮下組織や筋肉にまで到達した深い褥瘡には、滲出液を取り除き消毒した後に、皮膚を清潔な状態に保つために使われます。ワセリンには副作用がなく、化学反応も起こさないため、デリケートな部分に塗布しても問題がない皮膚保護の万能薬として使われています。しかし、そのワセリンそのものには傷を治療する成分が含まれていないため、他の薬や消毒と併用して褥瘡治療を行います。